『まだまだ小さな一歩』夫が放火殺人事件の犠牲…なのに『無収入』とされ大幅減額 最低額引き上げも課題残る「犯罪被害者等給付金」踏み倒される「賠償金」立て替え制度も見送りで遺族「悔しくてたまらない」
算定には『被害当時の収入』に基づき計算 休職中などで支払額低く課題
給付金の算定には、被害当時の収入に基づき算出される「基礎額」と呼ばれるものに養っていた家族の人数などに応じて算出される。「基礎額」には、被害者の年齢に応じた「最低額」と「最高額」が設定されている。 例えば被害者が20歳未満の場合の最低額は3200円となり、倍数を掛け合わせると金額は320万円となる。最終的な額は都道府県の公安委員会により決定される。 Aさんの場合、夫が当時休職中であったことから、給付金の基礎額が低いという壁にぶつかった。制度では休職中や幼い子どもなど収入が無い場合、残された家族への支払額が低いことなどが課題となっていた。 この制度での最低額は320万円と最高額との間には大きな差があるうえ、交通死亡事故で遺族に支払われる「自賠責保険」の平均給付額が約2500万円(2021年度)であることを踏まえると、最低額は3分の1にも満たない額となっている。
最低額が一律引き上げに…遺族へのサポートに『一人にしないで』
今回、講演を主宰した「犯罪被害補償の会」はこうした問題を国に訴え続けてきた。そんな中、国は去年、犯罪被害者への施策の推進を決定、警察庁が検討会を進め、協議を行ってきた。その結果、基礎額の「最低額」を一律6400円に引き上げるなどの改正が行われ、6月15日以降に発生した事件の被害者を対象に引き上げられた。 また、受給する遺族が配偶者や子ども、両親だった場合には基礎額に一律4200円を加算する点も新たに加わった。国は今回の見直しにより大半の犯罪被害者遺族が1000万円を超える給付額が実現できるとしている。一方でAさんは制度があるだけではなく、申請や制度の内容などに関し、被害者に寄り添った形での情報提供やサポートが重要だという。しかし今回の改正ではそうした点は見いだせなかったと指摘する。 (Aさん) 「(給付金は)パンフはくれるけど必要なら自分でどうぞと。『一人にしない』、悩み、不安をわかちあえる支援のあり方、困ったときにはこの窓口に行ったらいいですよという、手を差し伸べてくれるような仕組みがあったらと思います。しかし、今回の改正ではそうした点はなかなかみつけられませんでした」
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