じつに、恐るべき「太陽フレア」による宇宙線…なんと、地球誕生時には「もっと頻繁に起こっていた」かもしれない
太陽からのおそるべき放射線
こうした宇宙線の多くは、超新星爆発のときに高速でまき散らされたイオンや電子だといわれています。これらは太陽系の外から来るので「銀河宇宙線」ともよばれます。 しかし一方で、太陽から来るイオンや電子もあります。つねに太陽から流れ出しているエネルギーの低いものは「太陽風」とよばれています。 また、太陽表面で「フレア」とよばれる爆発(図「太陽フレア」)が起きたときなどに生じる、高エネルギーの宇宙線を「太陽高エネルギー粒子(SEP)」とよびます。フレアには小さいものから大きいものまでさまざまあり、大きいフレアが起こるとSEPのエネルギーも、その個数も多くなります。そのようなときは、地球では磁気嵐が起き、携帯電話やGPSが使えなくなったりします。 高緯度地域で見られるオーロラは、太陽風やSEPと地球の高層大気が衝突することで美しく輝くものですが、ときとして太陽フレアが巨大になると、オーロラが低緯度地域でも見られることがあります。1859年に起きた巨大フレアのときには、赤道域でもオーロラが見えました。このときは無線電信システムが停止し、電信機が発火したりもしています。 この巨大フレアは、リチャード・キャリントン(1826~1875)が詳細に観測したため「キャリントン・イベント」とよばれています。 当時は携帯電話や電力網がなかったため被害は限定的でしたが、いま、この規模のフレアが起きれば広い範囲で停電が起き、人工衛星も破壊されてしまうため、被害総額は100兆円以上になるのではと危惧されています。 ところが、京都大学の柴田一成教授(当時)のグループが、ケプラー宇宙望遠鏡を用いて太陽に似た恒星を観測していたところ、とてつもないフレアを起こすものが見つかりました。規模でいうとキャリントン・イベントよりもエネルギー量が何桁も上なのです。 太陽がまだ若い頃にはこうしたスーパーフレアがたびたび起こり、非常に高エネルギーの「太陽高エネルギー粒子(SEP)」が大量に地球に降り注いだ可能性が出てきたのです。 また、SEPが、初期の地球で生命の材料を生成に大きく関与していた可能性も見えてきました。 続いては、SEPが初期地球に与えた可能性を、より詳しく探ってみます。 生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか 生命はどこから生命なのか? 非生命と何が違うのか? 生命科学究極のテーマに、アストロバイオロジーの先駆者が迫る!
小林 憲正
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