「自爆営業」はパワハラ、厚生労働省が防止法指針に明記へ…企業へ対策促す
厚生労働省は、ノルマ達成などのため、社員らに自社製品の購入を強いる「自爆営業」の防止に乗り出す。強要された結果、自殺する人も出ており、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づく指針に、パワハラに該当すると明記することで企業に対策を促す。
自爆営業は、会社側がノルマを達成できない社員に自腹で契約を結ばせたり、不要な商品の購入を強要したりする行為をいう。農協職員が共済の掛け金を支払う、自動車販売店の社員が値引き分を負担するといった例は、後を絶たない。
愛知県内では金融機関で働く30歳代の男性が、ノルマが設定されていた預金額を増やすため、家族から借金を余儀なくされるなどして自殺。遺族が起こした訴訟で、名古屋高裁は9月、過大なノルマや上司の叱責(しっせき)による自爆営業が自殺原因の一つだと認定した。
パワハラは、▽優越的な関係を背景とした言動▽業務上必要かつ相当な範囲を超える▽労働者の就業環境を害する――の3要素を満たせば認定される。自爆営業についても、上司らに不要な商品の購入を繰り返し要求されるなどの実態を踏まえ、個別にパワハラと認められたケースはあった。
ただ、直接規制する法律などはなく、未然防止のためにも、パワハラ防止法の指針に明示すべきだとの声が労働者側などから出ていた。厚労省は新たに指針に盛り込むことで、企業側に対策を求めたい考えだ。どのように記載するかなどについては今後、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の議論を踏まえて決める。
島田陽一・早稲田大学名誉教授(労働法)は「自爆営業は昔からあり、企業発展のための『必要悪』と黙認されてきたが、現代では労働者に負担を強いることは許されない。指針改正によってパワハラの一つという認識が広がれば、世間の見る目も厳しくなり、抑止につながる」と話す。