フルーツで「糖尿病」リスク軽減、「骨粗鬆症」の抑制 果実で生活する研究家・中野瑞樹が“コツ”伝授
フルーツは「総合栄養食品」 糖尿病のリスク軽減、骨粗鬆症の抑制にも
中野さんによると、健康的な人が毎日、フルーツを200グラム食べていると「糖尿病や心筋梗塞、脳卒中、肥満などのリスクを抑えることができます」と話します。「フルーツ=糖質と思っている人が多いと思うのですが、大半のフルーツは83パーセント以上が水分(バナナは75パーセント)で、タンパク質は少なく、脂質や塩分はほぼゼロです。チョコレートやケーキなどのお菓子は、デンプンやショ糖といった糖質が多く、一般的に脂質や塩分が多いです」と違いを説明してくれました。 “糖質制限”という言葉をよく耳にしたりします。中野さんは「糖質制限と聞くと、甘いからという理由で、フルーツを真っ先に制限しようとされる方がいます。でも、そもそも生鮮フルーツは水分が大半なので、パンやご飯と比べても、糖質はとても少ないんです。例えば、糖質の割合は食パンが48パーセント、ご飯が35パーセントなのに対し、メジャーフルーツの中で最も多いバナナでも、19パーセントしかありません。イチゴはわずか6パーセントです」といい、「約8万人の日本人(35~69歳)をおよそ9年間、追跡調査した医学研究では、低糖質(糖質が総エネルギーの40パーセント未満)の男性は、死亡率が中糖質(50~55パーセント)の人と比べて、死亡リスクが59パーセント高いことが分かりました。確かに糖質制限食は、糖尿病などを患っている方が、専門医の指導のもとで行われることがあります。ただし、半年~1年以内の期間で行われる、緩やかなものです。健康な人が極端な糖質制限を長期間続ければ、逆に死亡リスクを高める恐れがあります」。「フルーツは現代日本人が不足しがちな、ビタミンやミネラルや食物繊維、さらに健康効果が期待されているポリフェノールやカロテノイドや有機酸などを多く含む、総合栄養食品です。国が勧めるように毎日200グラムは食べてもらいたいです」と力を込めていました。 フルーツを食事の最後に食べている人も多いのではないでしょうか。中野さんによると、「フルーツは病気の時や、“モグモグタイム”のようにスポーツのインターバルでよく食べられます。なぜなら、フルーツは消化負担が少ないからです。またフルーツはお酒やお酢になるように、発酵しやすいという特徴もあります。そのため、空腹時に食べればすぐに消化されるのに、食事の最後に食べてしまうと、体温37℃前後の胃腸の中で、何時間もほかの食べ物と混ざり合い、発酵してしまう恐れがあります」と話しつつ、「また2021年に中国で行われた実験では、食事の前にフルーツをとると、食後の最高血糖値が大幅に低かったことがわかっています。フルーツに含まれる栄養素の吸収率アップなどが目的でないなら、おなかの中での発酵を抑えるためにも、食事の前に食べることをお勧めします」と、教えてくれました。 例えば、毎食、食事前にミカンを1個ずつ食べるなどすると、1日200グラムくらいは摂取できます。「静岡県浜松市で行われた医学研究から、冬場にミカンを3~4個以上食べる人は、高脂血症などの脂質代謝異常のリスクが34パーセント、肝機能低下のリスクが49パーセント、2型糖尿病の発症リスクが57パーセント低いことが分かりました。また閉経後の女性については、骨粗鬆症のリスクが92パーセントも低いことも分かりました。これは、ミカンに多く含まれるベータクリプトキサンチンという栄養素の働きによると考えられています。骨粗鬆症に悩んでいる女性はぜひミカンを、冬場は毎食食事前に食べてもらいたいです」と話します。 15年以上、自身の体で実験を続けている中野さんの元には、フルーツを食べてやせた、アトピーや乾燥肌が改善されたといった、さまざまなエピソードが寄せられており、「人によって、体感を得られやすいフルーツがパイナップルだったり、ミカンだったりと異なります。年中スーパーに並んでいるフルーツを食べながら、旬のフルーツをいろいろと食べてみると、意外な発見ができるかもしれません。フルーツの健康研究はまだまだ進んでおらず、いろいろな可能性を秘めています」と目を輝かせていました。 “野菜は毎日食べるべき”と思っている人は多いと思います。フルーツを手に取ると、甘い香りがして、リフレッシュすることもでき、ストレスの軽減を感じることもあります。ぜひ、“フルーツも毎日食べるべきもの”と思って、1日の推奨摂取量200グラムを目指して生活していただきたいです。 ◆引用参考 ・健康日本21(第三次)推進のための説明資料 令和5年5月/厚生労働省 ・WHO and FAO announce global initiative to promote consumption of fruit and vegetables(2003.11.11) ・糖尿病診療ガイドライン2024/日本糖尿病学会 ・J Nutr. Volume 153, Issue 8, August 2023, Pages 2352-2368 ・日本食品標準成分表2020/文部科学省 ・食品成分表2022/女子栄養大学出版 ・日本人の食事摂取基準2020年版/第一出版 ・Nutrients. 2021 Jul; 13(7): 2470 ・Br J Nutr. 2015 Nov 28;114(10):1674-82 ・Br J Nutr. 2016 Feb 26:1-8. ・BMJ Open Diabetes Research & Care2015; 3:e000147. ・PLoS One.2012;7(12):e52643. βcpxと骨粗鬆症
オトナンサー編集部