「一つの欧州」終わりの始まりになるか? 英国でEU国民投票
離脱を歓迎しないジブダルタルやフォークランド諸島
23日の国民投票では、英領ジブダルタルに住む約2万3000人の有権者にも投票権があります。ジブダルタルで最近行われた世論調査では、有権者の85パーセントが投票に行く予定で、88パーセントがEU残留を望んでいるという結果が出ています。人口3万2000人のジブダルタルでは金融サービス業が主要産業の1つとなっており、EU加盟国は1つの国で免許を取得すると他国で新たに免許を取得することなく金融サービスが行える「パスポーティング」という制度を利用できるため、離脱はEUという巨大な単一マーケットから締め出されることを意味します。 もともとスペイン領であったジブダルタルでは、スペイン政府からの要請もあって1967年にイギリスへの帰属を問う住民投票が行われましたが、ほぼ全ての住民がイギリス領として残る選択をしています。2002年にはイギリスとスペインによる共同統治案も出ましたが、ジブダルタルの住民からの反対が強かったために計画は立ち消えになっています。ジブダルタルでは英領からの独立を求める声も以前から存在しており、23日の国民投票の結果次第ではスペインとの接近や独立を求める声が出てもおかしくはありません。 ジブダルタルの他にもEU離脱の影響を受ける地域は存在します。南大西洋にある英領フォークランド諸島は、現在も領有権をめぐってイギリスとアルゼンチンがにらみ合いを続けている場所です。1982年には両国の間でフォークランド紛争が勃発し、両軍合わせて3000人近くの死傷者を出しました。アルゼンチン政府の圧力によって南米地域への貿易がほとんど行えなくなったフォークランド諸島では、輸出品の約75パーセントがEU加盟国向けとなっており、国民投票の結果次第で地元経済は大きな打撃を受けることになります。 また、イギリスとアイルランドの関係がEU離脱によって悪化することも懸念されています。現在も北アイルランドはイギリスの一部ですが、アイルランドもEUに加盟しているため、アイルランドと北アイルランドの国境は事実上解放され、同じ島の中で自由な往来が可能になりました。イギリスのEU離脱によって国境管理が再び強化されることによって、両国の関係にヒビが入るとの声も。 また、ヨーロッパへの帰属意識が高く、EU残留派が圧倒的に多いスコットランドでは、イギリスがEUを離脱した場合に、再びイギリスからの独立を求める運動が再燃する可能性もあります。