「一つの欧州」終わりの始まりになるか? 英国でEU国民投票
「反EU」のムーブメントはイタリアでも
19日にはイタリアで統一地方選挙が行われ、首都のローマでは反EUの姿勢を明確に打ち出した弁護士で前ローマ市議会議員のビルジニア・ラッジ氏が市長選に当選。ローマ初となる女性市長が誕生することになりました。ラッジ氏は2009年に誕生した新興政党「五つ星運動」に所属しており、北部の工業都市トリノでも同党所属の女性候補が市長選挙で勝利を収めています。ツイッターで200万人以上のフォロワーを持つコメディアンのベッペ・グリッロ氏によって作られた「五つ星運動」は、イタリア社会に現在も深く根付く汚職や縁故主義を一掃することを政策に掲げていますが、同時にヨーロッパ統合に反対する「ユーロスケプティシズム(欧州懐疑主義)」のイタリアにおける旗手的存在でもあります。 ローマでは2014年に地元政界関係者とマフィアの癒着をめぐるスキャンダルが明るみになり、前市長も公費流用疑惑で辞任に追い込まれています。イタリアの伝統ともいえる縁故主義やそれにリンクした汚職に憤る市民の声を代弁する形で、「五つ星運動」は着々と支持基盤を拡大しており、2018年に行われる総選挙で台風の目となる公算が強まりました。仮に五つ星運動による政権が誕生した場合、イタリア国内でもEUと距離を取るべきとの声が強まる可能性はあります。 イタリア以外のEU加盟国は、EUという存在をどのように見ているのでしょうか?米ワシントンを拠点とするピュー・リサーチ・センターは7日、欧州各国におけるEUに対する見方の違いを調査した結果を発表。イギリスのEUからの離脱に関しては、回答者の約7割が「いい結果をもたらさない」と答えましたが、EUそのものに対しては「好意的に見ている」が51パーセント、「好意的に見ていない」が47パーセントと大きく分かれる結果となりました。 また、国別ではポーランドやハンガリーといった東欧諸国でEUに好意的な声が6割を超えたのに対し、スペインやイギリス、フランスでは5割を切っており、東西ヨーロッパでEUに対する温度差が浮き彫りになりました。各国に共通しているのは、世代によってEUに対する思いが異なるという部分です。18歳から34歳までの年齢層では、ギリシャ以外の国全てでEU支持が半数を超えましたが(調査は10カ国で行われました)、50歳より上の年齢層では支持派の割合が全体的に下がっています。フランスでは25ポイント、イギリスでも19ポイントの差が世代間で存在することが調査で判明しています。 イギリスで行われる国民投票の結果次第では、欧州懐疑論の強いEU加盟国の間でもドミノ現象が発生するのではと危惧する声も出ており、23日の国民投票はEUの基盤を揺るがしかねない“地雷”と化してきました。 (ジャーナリスト・仲野博文)