2015年日本政治の注目ポイントは? 早稲田塾講師・坂東太郎のよくわかる時事用語
「原発再稼働」も争点の1つ。もっとも2011年3月に起きた福島第一原発事故の直後に行われた統一選でも原発の立地自治体で「反原発」「脱原発」候補が勝ったとはいいがたい結果になっています。雇用や財政面を天秤にかけると地方選ゆえに安易な反対はできないという側面もありそうです。 現在、原子力規制委員会が「合格」を与えて地元の鹿児島県と薩摩川内市から同意を得ているのは九州電力川内(せんだい)原発1、2号機のみ。書類の修正を認可するなどの手続きが済めば早くて4月には再稼働できる環境が整いそうです。規制委と政府の判断次第ですが、統一選を外してくるかどうか気にかかります。 原発再稼働に関しては立地自治体以外の周辺自治体の動きも気になります。川内を例にすれば事故が起きたら薩摩川内市だけでは済みません。避難計画作成が義務づけられている原発の半径30キロ圏内の自治体となると、規制委員会が「合格」を出した関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の隣にある滋賀県も範囲となります。むしろこちらの方に「再稼働反対」のうねりが来る可能性がありそうです。
「安全保障法制」「COP21」
統一選が終わると14年に閣議決定した「集団的自衛権の限定行使容認」の法改正が議題となりそうです。例えば自衛隊法76条は「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる」とあり、そのままでは個別的自衛権の範囲に止まるようにしか読めません。1999年制定の周辺事態法も「目的」として「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定め」とあります。この当たりからの改正論議が始まるでしょう。既に日米で改定すると決めている新・日米防衛協力の指針(新ガイドライン)への文言も注目されそうです。 年末までに仕上げなければならない国際課題として地球温暖化に関する自主目標策定も待ったなしです。気候変動枠組み条約締約国会議(COP)は既に2020年から始まる加盟国すべてが参加する「新枠組み」の採択を2015年のCOP21と決めています。原発推進で乗り切ろうと考えていた日本もその前提が覆ってから極めて消極的な立場を取ってきました。今までは中国やアメリカといった温室効果ガス排出量1位と2位の利害対立に隠れていましたが、アッと驚く抑制目標を出してきたら国際的孤立に陥りかねません。 確かに総選挙では安倍政権が大勝しました。しかし投票率の低さもあり国民は「白紙委任状」を渡したわけではないという指摘もあります。まずは「この道しかない」とまで言い切ったアベノミクスの成果です。具体的には「成長戦略」の是非。ここと絡んでTPPが妥結するかどうかも焦点となるでしょう。14年に日米の中央銀行が正反対の動きをしました。米連邦準備理事会が量的緩和を止め、利上げへと向かったのに対して日本銀行は量的緩和第二弾を発射しました。このままだと対ドルでの円安は一層進みそうで日本人の誰も得をしない「悪い物価高」になる気配もあります。連続してのGDPマイナスともなれば世界中から「日本はリセッションだ」とみなされ外国人投資家が日本市場から引き上げる株安の不安も大いにあります。原発再稼働や集団的自衛権の限定行使容認も国民の圧倒的多数から支持されているとは言いがたい状況です。沖縄の米海兵隊普天間飛行場の辺野古移設問題も反対派の知事勝利と衆議院小選挙区での全滅を考えれば容易にことは運ばないでしょう。