2015年日本政治の注目ポイントは? 早稲田塾講師・坂東太郎のよくわかる時事用語
「リセッション」「第三の矢」「TPP」
2月に入ると14年10~12月の国内総生産(GDP)速報値が出ます。もしマイナスであれば3四半期(3か月ごと)連続となり、マスコミが慎重に使用を避けている「リセッション」(景気後退)と認定する機関やメディアが出てきそうです。「だからこその消費税再増税の先送りだった」と一応かわせる言葉を政権は持っています。ただ一度リセッションの認識が広まれば「日本は何しているのだ」というアメリカや国際通貨基金(IMF)などの疑問の視線を感じずには得ません。一層の円安を呼び込むと生活必需品を中心とした輸入インフレが加速して生活の苦しさを富裕層を除いた人々に与えるでしょう。そこで「第三の矢」と称するアベノミクスの「民間投資を喚起する成長戦略」はどうなっていると注目されます。 確かに「第三の矢」が目に見える形で実現しているのは一般用医薬品のネット販売解禁ぐらいです。医療・雇用・子育て・農業といった分野を改革するといってはいても抵抗はすさまじいでしょう。医療は国民に浸透している皆保険制度が雇用は正社員の厳しい解雇・賃金規制を定めている現行法が、農業は農地法や農業協同組合の存在がそれぞれあります。これとは別に法人税の引き下げも検討されましょう。ただこれで恩恵を受けるのは一握りの大企業のみ。財務省が対案とする外形標準課税の範囲拡大は消費税3%増で打撃を受けている中小零細企業に負担を強いるに他なりません。租税特別措置を見直すという案も大企業を中心に反対が起きそうです。そもそも法人税を下げたらどこの外資が日本へ投資しようとやってくるでしょうか。人口減少の国に投資意欲がわくとは思いにくいのが現状です。 本当はそうしたあれこれを吹き飛ばす「神風」こそ環太平洋パートナーシップ協定(TPP)なのでしょう。TPPは本来既に妥結しているはずの約束なのにいまだ延長戦が続いています。自民党が公約とした農産品「重要5項目」を譲らず、決裂したら大変です。日本はアメリカとともにあるTPPと中国を含む構想である東アジア地域包括的経済連携(RCEP=アールセップ)の両方に目配りしてけん制している「つもり」ながら、TPP難航で業をにやしたアメリカが中国と組んでアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP=エフタープ)路線に切り替えないとは断言できません。といってTPPで妥協したらしたで自民支持層は真っ二つに割れるでしょう。反対から推進に回り農林水産大臣に任命された西川公也議員が自民党圧勝で終えた2014年総選挙で小選挙区で敗北したのは他の与党議員に強い圧力となっているはずです。