唐田えりか&剛力彩芽がクラッシュ・ギャルズに込めた思いとは?──Netflixシリーズ「極悪女王」に傑作の予感! なぜ“全女”に日本中が熱狂したのか?
オーディションの結果、唐田は長与千種役、剛力はライオネス飛鳥役に抜擢される。 壮絶な過去を生きてきた長与について、唐田は次のように解釈した。 「長与さんが生きていくためには、自ら立ち上がるしかなかったでしょうし、そのためには自分の弱さと向き合うしかなかった。本当に強くならなければ生きてこられなかったのだと感じました。そんな長与さんの生き様が、当時の自分とすごく重なったんです」 剛力は飛鳥を「真面目で孤独な人」だと感じた。 「飛鳥さんは先輩からも好かれていたらしいんですけれど、ひとりでいることが多かったようで、どこか孤独な印象を受けました。でも、あまり自分を表に出さない感じが素敵で。きっと一番プロレスが大好きで、強いプロレスを見せたかった人だと思います。長与千種と対峙する時には強い存在でいなければならないですし、一方でクラッシュ・ギャルズでいる時に長与さんを守る姿は本当にかっこいい。そういう静かな強さをもてる人になりたいと思いながら、飛鳥さんを演じました」 実際、試合の撮影では、飛鳥のような気持ちになりながら、唐田が演じる長与を見つめていたという。 「彼女(唐田)は撮影の合間はいつもニコニコしてみんなの中心にいるんですけど、芝居が始まるとサッと空気が変わるんです。撮影に入るともう長与千種だなって感じました。特に悔しがる表情がかっこよくて、それに惹きつけられてしまう。試合をしながらそんな彼女を見ていると、この人を守らなきゃって勝手に思えてくるんです」
見どころは、試合中の表情?
試合のシーンでは、唐田も剛力も、殴り合ったり、投げたり、投げられたりといった女子プロレスラーのアクションをほとんど自ら行っている。殴られて赤くなった胸元や所々にできたアザを見れば、いかに彼女たちがプロレスに向き合って、カラダを張って演技をしていたのかがよくわかる。 普段はスリムな体型のふたりだからこそ、女子プロレスラーに見えるよう、また激しいアクションに耐えられるようにカラダを鍛えたそうだが、体重を増やすことには苦労したという。トレーニング開始当初は「毎日が食べ放題のようで嬉しかった」と振り返る唐田だが、その気持ちは長くは続かなかった。 「約1年半にわたって週3回のマシントレーニング、週2回のプロレス練習を続けていました。はじめは体重を増やすためにたくさん食べられることが嬉しかったんですが、だんだん飽きてきて、最終的には噛むことすら面倒臭くなりました。当時は空腹の状態を作らないようにひたすら食べ物を口に入れていて、一番食べた日で1日6食。ラーメンに餃子と大盛りゴハンを追加して食べてましたし、寝る前にカップラーメンを食べることもありましたね」 剛力も同じく体重を増やす苦労を振り返る。 「女子プロレスラーとして強そうに見えることが大前提だったので、筋肉をつけることで体重を増やそうと思いました。もともと食が細かったんですが、あまり量を食べることができなかったお肉を積極的に食べているうちに食事量が増えてきて、プロレスのアクションに耐えられるカラダに仕上げることができたんです。この作品での役づくりのおかげで、以前は完食できなかったフルコース料理も食べ切れるようになりましたし、食事を楽しめるようになりました」 ふたりにとって新たな挑戦となったこの作品は、どのような影響をもたらしたのだろうか。オーディション当時、俳優としての進退も考えるほど悩みを抱えていたという唐田だが、結果として本作への出演が周囲への恩返しになったという。 「当時はいろいろな思いがあった中で、それでもやっぱり俳優の仕事を諦められなかったですし、演じたい気持ちがあったので、オーディションを受ける決意を固めました。あの時に白石監督がキャスティングしてくださったことは、私の背中を押してくれるようなメッセージが込められていると感じましたし、そういう思いも受け止めながら、作品に挑みました」 苦しい時も支えてくれた事務所の関係者、家族への感謝を口にする唐田にとって、ここは大事な場面だったのだろう。口元を引き締め、訴えかけるように語り出した。目には光るものがあった(ように見えた)。 「大切な人たちの思いに対して、ようやく作品としてお返しすることができたと感じます。そういう意味でも、『極悪女王』は人生を変えてくれた作品だと思いますし、やっとスタート地点に立てた気がするんです」 一方、剛力はプロレスの見方が変わり、芝居との共通点を見出すことができたと話す。 「以前はプロレスを怖いと思っていたのに、今はめちゃ好きになったんです。もちろん今でも怖さがないわけではないんですけれど、選手の目線でプロレスを観られるようになって、面白さがさらに理解できた気がします」 プロレスは相手との息が合わないと試合が成立しないエンターテインメントだ。そういう意味では芝居に通じている部分がある、と続ける。 「たとえば、場面によって受け身の取り方が変わってくるのは、相手の受け取り方によって見え方が変わってくる芝居に通じる部分があります。そういった気づきは、この作品に携わることができてよかったと感じるひとつ。それとアクションシーンで受け身をとることも上手になりました(笑)」 最後に作品の見どころを尋ねると、それぞれがお互いに相手の「試合中の表情がよかった」と、口をそろえる。試合のシーンでは派手なアクションに目がいきがちだが、クラッシュ・ギャルズとしてお互いを見守る視線や表情に注目すると、この作品にさらに深く没頭できるはずだ。