生成AIはヒトの仕事を「奪わない」 弁護士が語る“超少子高齢化”時代の人工知能との共存共栄
「AIガバナンス」で、より良い社会を
――羽深弁護士は昨年末、『AIガバナンス入門 リスクマネジメントから社会設計まで』という本を上梓されましたが、AIの世界における「ガバナンス」とは何か、わかりやすく説明していただけますか。 羽深弁護士:「ガバナンス」とは「統治」などと訳されるので、堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、簡単にいえば、われわれの社会でさまざまな価値を実現するために、どのような制度や仕組みを作るのか、という話です。われわれの周りには、法律だけでなく、会社の内規や家庭のルールなど、さまざまな制度があります。AI時代のスピードにあわせて、これらを柔軟に変えていかないといけない。そしてそれは政府だけで解決できるものではなく、実は社会全体で取り組んでいかないといけない身近な話なのだということを理解していただきたいです。 ニュースなどでは、ともすればAIのリスクの面だけを強調して報じられがちですよね。でも、繰り返しになりますが、AIというものは社会に多くの恩恵をもたらしてくれるものだということを忘れてはなりません。特にこれから先、少子高齢化を迎える日本社会ではさらに欠かせないものになっていくことでしょう。 これまでも新しいテクノロジーが登場した際、常にリスクはつきまとってきたものですが、先人たちはそれを回避してテクノロジーの恩恵を受けるための道を懸命に模索してきました。そして、そのためのルールは、本来、一握りの学者や政治家たちが決めるものではなく、社会を構成するわれわれ一人ひとりが考えるべきものなのです。 これは私たち自身が、いま、目の前にある社会をどうすべきかを根本的に問い直すということであり、ここ数年のAIの急激な進化は、そのための良いきっかけを与えてくれたとも言えますね。『AIガバナンス入門』では、そのあたりのことをできるだけわかりやすい言葉で書いたつもりですので、機会があればぜひ一度お手に取っていただけたらと思います。
■羽深宏樹(はぶか・ひろき) 1985年生まれ。京都大学法政策共同研究センター特任教授、東京大学法学部客員准教授、スマートガバナンス株式会社代表取締役CEO。弁護士(日本・ニューヨーク州)。森・濱田松本法律事務所、金融庁、経済産業省等を経て現職。東京大学法学部・法科大学院、スタンフォード大学ロースクール卒(フルブライト奨学生)。2020年、世界経済フォーラムおよびApoliticalによって「公共部門を変革する世界で最も影響力のある50人」に選出された。
島田一志