生成AIはヒトの仕事を「奪わない」 弁護士が語る“超少子高齢化”時代の人工知能との共存共栄
日本はなぜ「機械学習天国」と言われるのか
――著作権侵害と言えば、そもそも、AIに学習させる元のデータの多くにも著作権があるのではないかと思うのですが、現状、日本ではその部分はどうなっているのでしょうか。 羽深弁護士:著作権法上、著作物に表現された思想または感情の「享受」を目的としない場合には、権利者の許諾を得ることなく著作物等を利用できることになっています。要するに、単に著作物を機械に読ませるだけであれば、原則として著作権者の許可は不要ということですね。 このことをもって、日本が「機械学習天国」と言われることもあります。ただし、著作権者の利益を不当に害している場合は除く、という例外があるので注意が必要です。また、これはあくまでAIに学習させる際の話です。先ほどお話したとおり、学習させたAIモデルから出力されたコンテンツが著作権侵害にあたる場合はあるのでお気をつけください。
AIはプロのような文章が書けるか
――現在、多くの人々が、X(旧Twitter)やYouTube などのプラットフォーム上で「作品」を発表していますが、「作品」と一口に言っても、文章(小説・詩)、イラストレーション、漫画、映像、音楽など、その表現方法はさまざまです。そこで、ここからはいくつかの表現ジャンルと生成AIの現状についてうかがいたいと思いますが、まずは多くの人々にとってもっとも身近な表現だと思われる文章についてお訊きします。現時点において、生成AIはどこまでプロレベルのテキストを書くことができますか。 羽深弁護士:“それっぽい文章”を書く技術は相当進化してきているように思いますが、まだまだプロレベルとまでは言えないでしょうね。趣味で作るレベルのものであればAIでも作れますが、作家や詩人が書くような、心を揺さぶるような文章をAIが生成することは現時点では難しいのではないでしょうか。1万回作らせてみたら、1回くらいはプロが見ても唸るような名文ができるかもしれませんが、素人がプロレベルの文章をやすやすと創れるかというと、全くそんなことはないかと思います。 ――芥川賞受賞で話題になった、実際にAIが書いたテキストを作品の一部に組み込んだ『東京都同情塔』(九段理江)のような例は別にして 、現状、一部のプロの小説家は、プロットやあらすじなどの構想段階で、生成AIを活用しているようです。 羽深弁護士:まさにAIはそうやって使うのが良いのだと思います。AIがいきなり完璧な作品を作ることは現時点では難しいでしょうが、玉石混交のさまざまなアイデアを出してもらったり、何かきっかけになるフレーズを出してくれたりすることで作品が磨かれていくということですね。