岡山地裁

　2022年に岡山市の西田 真愛（まお）ちゃん（当時6歳）が虐待を受けて死亡した事件の岡山地裁判決で、懲役10年の実刑判決を受けた母親の西田彩被告（36）が、控訴を取り下げ、刑が確定したことが明らかになった。弁護人によると、西田被告は「残された3人の子どもたちの元へ、一日でも早く戻りたい」と理由を説明しているという。

　地裁の裁判員裁判で弁護側は、西田被告には軽度の知的障害などの疑いがあるほか、交際相手の船橋誠二受刑者（41）（懲役14年が確定）に食事や入浴時などの子どもとの接点を減らされたり、生活費を管理されたりと精神、経済などの面で家庭内暴力（DV）を受けており、「制止したくてもできない状況だった」と主張した。

　しかし、地裁はそれを退け「（真愛ちゃんの）素行を報告し、船橋がそれに応じた虐待に及んでも一切制止しなかったのは、『しつけ』として一緒に虐待をするという意思を通じ合っていたと認められる」と共謀を認定。検察の求刑通り懲役10年の実刑を言い渡した。

　弁護側は西田被告と協議した上で即日控訴したが、その後、弁護人の元に、共謀が認められたのは納得がいかないと主張しつつも、「真愛ちゃんの誕生日の9月24日に控訴を取り下げたい。早く受刑して、子どもたちに直接謝りたい」などの思いをつづった長文の西田被告の手紙が届いたという。

　弁護人は西田被告に接見し、「共謀の認定はおかしい。控訴した方がいい」と促したが、最終的には西田被告の意思を尊重し、9月26日付で控訴を取り下げたという。

　西田被告には、2審で量刑が軽くなる可能性は残されていた。棄却されても、刑法21条では、有罪が確定するまでの未決勾留期間を刑期に算入することができると定めている。しかし、弁護人は「実際に勾留期間全てが刑に算入されることは少ない。裁判員裁判の判決を覆すのはなかなか困難で、最高裁まで争う場合、子どもたちの元に戻る日が遅くなってしまうことを心配したのでは」と話した。