「痛みを訴えても“気のせい”と言われ…」『極悪女王』指導役・長与千種が語る80年代の狂気と「少女たちとの絆」
少女たちのパワーで、客層の男女比が逆転した
長与 それまでプロレスは男性がメインの観客でしたし、私が新人の頃はまだ変なお客さんがいっぱいいました。お酒を飲んでいる方も多いからか、女子選手を性的な対象としてまなざしてきて「脱げよ」という言葉を浴びせてきたり、実際に脱がそうとする人もいました。客同士の殴り合いや選手とのいざこざも日常茶飯事。 でもいつの時代もそれを救うのは少女たちなんです。少女たちのパワーが今までの流れを全部変えてくれました。客層の男女比も逆転して。 スー 残念ながら80年代も現代も、何かを頑張る女性とそれを応援する女性がいても、最終的に利益を吸い上げていくのは男性という構造はそんなに変わっていないと思うんです。でも、選手と少女たちの間に生まれた絆だけは、絶対に誰にも奪えないというか、搾取できない。 長与 だから今でもつながっていられるんですよね。彼女たちは歳を重ねた今でも応援に来てくれるし、「お願いがあるんだけど、うちの子たち今度試合やるから、よかったら応援してくれない?」と言うと、大概の人は足を運んでくれようとする。なかなか若い選手にはついていけないと言葉を濁しながらも、娘や息子を連れてきてくれて、今度は子どもたちが応援してくれるようになる。 だから、あのときの人たちとはたぶん死ぬまで一緒なんだと思います。少女たちがいなかったら、クラッシュもダンプも存在し得なかった。 ※全日本女子プロレスを経営していた松永兄弟への愛憎や、SNSの登場によるプロレス界の変化、現在のダンプ松本との関係などについて語った全文は『週刊文春WOMAN2024秋号』で読むことができます。 ジェーン・スー 1973年生まれ東京出身。コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」のパーソナリティとして活躍中。近著に『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)。 長与千種 1964年生まれ長崎県出身。80年に全日本女子プロレス興業(全女)でデビューし、83年にライオネス飛鳥とクラッシュ・ギャルズを結成。2016年にMarvelous Prowrestlingを設立し、代表と運営、さらにプロデューサーとして活躍中。
綿貫大介