「痛みを訴えても“気のせい”と言われ…」『極悪女王』指導役・長与千種が語る80年代の狂気と「少女たちとの絆」
あらゆる手段で応援してくれた少女たち
長与 本作はクラッシュ・ギャルズの対角にダンプ松本がいる構図ですよね。でも、もう一人主役がいると私は思っているんです。それは、応援してくれた少女たち。 今でも応援してくれるファンの方々も昔は少女だったわけで、かつてどんな応援をしてくれていたのか聞いてみたんです。するともう、中学生時代から全国を一緒に回っていたらしいんですよ。 スー ご家族と一緒に? 長与 いいえ、友達と。駅の掲示板等でやりとりをして。 スー は~すごい! 昭和だ! 長与 先生と交渉して学校を休んだり、遠征費に関しては青春18きっぷなど格安チケットを使ったり、遠征先で仲良くなった友達の家に泊まったりしていたそうです。チケットはダフ屋さんに安く譲ってもらったりして。 スー ダフ屋、いましたね。 長与 当時からありとあらゆる方法を駆使して応援してくれていたと知って、目からウロコでした。 スー 長与さんは当時の少女たちの声援をどう感じていましたか? 長与 目黒の事務所の近くに女子高がいくつかあったんです。走っていると同年代の女の子たちから、「一生懸命やってるから応援したくなる」「今度観に行く」と言われて、その子達が観に来てくれるようになりました。 今でも覚えているんですが、後楽園ホールで相方と初めてタッグを組んでダイナマイト・ギャルズと対戦した試合で、10人くらいの子たちが初めて紙テープを投げてくれたんです。両手いっぱいに持ったテープを一生懸命に。それが嬉しかった。それからは女子高生たちがどんどん増えていって、客席を埋めてくれるようになりました。同じティーンエイジャーとして、この子たちのためにも頑張らなくちゃと思いましたね。 私たちはいろんな葛藤を抱えて勝負の世界に挑んできたけど、それは観客の少女たちも同じなんです。応援してくれていた人は自己投影してくれていたんだと思います。私たちも同じで、彼女たちのことを考えないときなんてなかった。きっと、お互いに励まし合っていたんです。 だからこそ、強い人でいなきゃいけなかった。何度倒れても立ち上がらなきゃいけなかった。私はその姿勢をプロレスの試合を通して伝えていた気がします。 スー 紙テープは買ってきたものをそのまま投げられるわけじゃないと、プロレスを生観戦するようになって初めて知ったんです。全部一回ほどいて巻き直す大変な作業がある。その子たちがどんな気持ちでテープを準備してリングに立つ選手に向かって投げていたんだろうと想像すると、涙が出てきそうです。