日本ロングボード紀行【浜松】
日本ロングボード紀行【浜松】
海に囲まれた日本列島には、日々、大海原からうねりが押し寄せる。豊かな海岸線、峻嶺な山々から注ぐ大河に恵まれ、さまざまな波を生み出している。四季折々、津々浦々で、今この瞬間も波が生まれては消えていく。そこには、その波をこよなく愛し、守り、慈しむサーファー達の姿がある。そう、日本は世界に誇るサーフアイランドなのだ。この連載では、ロングボードを切り口に、各地のサーファーコミュニティと彼らの地元の波への思いを伝えていきたい。 今回、足を運んだのは浜松。果たして、どんなサーファーと波が待っているだろうか? ◎出典: NALU(ナルー)no。117_2020年7月号を再編集した記事になります。
コアサーファーが集まるエリア・浜松
駅からクルマで約10分、距離にして約5キロ。街中から海岸がこれほど近いエリアは全国的にも珍しいだろう。 「明日の朝、波がよさそうだから仕事の前、海に行こう」。 朝イチのサーフィンから始まるライフスタイルを築いているハードコアなサーファーが多数いる浜松エリア。 浜松市は東京と大阪のちょうど真ん中に位置し、人口は約80万人。面積は全国の市町村で2番目を誇り、2007年には政令指定都市に指定された。世界を代表するメーカー、スズキ、ホンダ、ヤマハ、カワイがここ浜松で創業され、「ものづくりの街」として全国に知れ渡っている。浜松の象徴の一つでもある浜名湖周辺はリゾート地として開発されている場所も多く、ボートやヨットなどのマリンスポーツも盛んだ。 サーフィンのイメージとしては、静波と伊良湖に挟まれて、サーフトリップの旅先としては中々のアンダーグラウンドなエリアであると思う。その反面、多くのプロサーファーを輩出している。実力者も多く、サーフィンの歴史も深く浸透している。過去には全日本のコンテストが開催され、今でも語り継がれている。 ベストシーズンは「遠州のからっ風」が吹き続ける冬型の気圧配置が決まる季節以外は比較的コンスタントにコンディションが決まり、風の弱い時間帯を選んで波乗りを楽しめる。代表的なポイントは、中田島・凧場。浜松を代表する祭り「浜松祭り」のメイン会場であることから地元では「タコバ」と呼ばれている。他のポイントよりウネリの反応がよく、多くのローカルが常に気にかけている。駐車スペースも広く水道、トイレも整備されており、波のいい日は必ず大勢のサーファーでにぎわっている。 波質的にはショートでもロングでも合う波があり、サンドバーによってはショートとロングのピークが分かれることもある。比較的ブレイクもメローでビギナーにも適したポイントでもある。凧場周辺の風が合わない時は西に動けば舞阪・潮見坂エリア。東に動けば豊浜・鮫島エリアとポイントも多数。ポイント間の移動距離もそれほど遠くなく、その時々の地形と風向きに合わせて足を運ぶことが可能だ。