【名馬列伝】ウオッカ、ダイワスカーレットが築き上げた“牝馬の時代”を継承したブエナビスタ。顕彰馬クラスの実績を刻んだ名牝物語
勝ち鞍が遠ざかるも、リベンジ期したJCで父娘制覇
4歳になった2010年。春にヴィクトリアマイル(GⅠ)を制すと、秋には天皇賞(GⅠ)でペルーサをはじめとする牡馬の強豪をなで斬りにして優勝した。自身初となる牡牝混合GⅠでの勝利を収め、その実力を惜しみなく見せつけた。 5歳となった2011年は勝ち鞍から遠ざかり、連覇がかかった天皇賞(秋)も従来の切れ味が影を潜めて4着に終わってしまう。こうした成績を受けて、一部の世評は「ピークを過ぎた」とネガティブな方向へ流れていったが、彼女はまだ終わっていなかった。 前年は2着降着で手の中のメダルを滑り落としたジャパンカップ。前年の天皇賞でも見せた中団追走という新味を見せながら追走したブエナビスタは、直線で先に抜け出した、この年の天皇賞馬トーセンジョーダンめがけて強襲する。坂上でそれを捉えると、僅かに先へ出た差を最後まで守り切って優勝。リベンジを果たすとともに、当時の最多勝利記録となる6つ目のGⅠタイトルを手に入れた。 ラストランとなった有馬記念(GⅠ)を7着で終えたブエナビスタは、現役生活を終えて繁殖入り。これまで9頭の仔を産んでいる。 ブエナビスタはGⅠレースで6勝を挙げたことに加えて、追い込み脚質であるがゆえに前を捉え切れないことも多く、GⅠで2着6回(降着を除く)という珍しい記録も持っている。たとえオフィシャルな栄誉を受けられなくとも、彼女の鮮烈にして闘志溢れる走りは、ファンのハートに今も深く突き刺さっている。 文●三好達彦
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