コマースメディアとリテールメディアの違いは? 広告の最新トレンドを押さえよう
コマースメディアとは、「コマース = 商取引(が発生する業者)」「メディア = 媒体」を組み合わせた言葉です。つまり、小売業者以外でも、会員情報や購買履歴などのファーストパーティデータを多く保有している企業は、小売業者がリテールメディアを構築したように、コマースメディアを構築し、広告を事業とすることができます。 コマースメディアもリテールメディアも精緻なターゲティングやクローズドループ測定ができる点は共通していますが、コマースメディアは「オープンインターネット」のコンセプトに従い、ブランドはプログラマティックにインターネット全体に広告を配信できます。 リテールメディアは、主に小売業者のオウンドメディアを通じて収集したファーストパーティデータに限定するのに対し、コマースメディアは他のパブリッシャーや広告主のファーストパーティデータやシグナルを加えます。 |コマースメディア |リテールメディア 対応業種 |金融、旅行、IT、サービスなど幅広く対応 |小売に特化 ファーストパーティデータ |企業が保有する大規模なファーストパーティコマースデータを活用。また他のパブリッシャーや広告主のファーストパーティデータやシグナルを加える |主に小売業者のオウンドメディアを通じて収集されたファーストパーティコマースデータに限定する クローズドループ測定 |可 |可 オープンインターネットへの対応 |可 |△オフライン配信で提供する企業もある 最新の例としては、2024年6月、航空大手のユナイテッド航空が発表したメディアネットワーク「Kinective Media」が挙げられます。発表資料によると、活用するデータは、次の通り。 1. ユナイテッドモバイルアプリのデータ:iOSおよびAndroidの合計ダウンロード数は1億1,000万を超え、月間セッション数は約1億 2. ユナイテッド航空のマイレージプログラム、マイレージプラス(MileagePlus)のデータ 3. ユナイテッド航空の機内エンターテイメントシステム(座席背もたれに設置された約10万台のスクリーンを含む)のユーザーデータ となっており、広告主はこれらのユナイテッド航空のデータを使用して匿名化された視聴者セグメントを作成し、ユナイテッドのモバイルアプリ、機内エンターテイメントスクリーンシステム、ユナイテッド空港ラウンジ、空港サイネージなどでリーチできます。 平均飛行時間に基づくと、旅行者1人当たり3.5時間の視聴が可能ということですので、没入感の中での広告視聴も可能ですし、ファーストクラスやビジネスクラスの旅客をターゲットとした富裕層マーケティングにも活用できそうです。 その他、金融業界ではチェース銀行、ホテル業界ではマリオットホテル、タクシーやデリバリー業界ではウーバー、企業会計ソフトウェアのインテュイットなど、さまざまな業界から新しいアドネットワークが立ち上がっています。日本ではNTTドコモのドコモ アドネットワークが代表例です。 コマースメディアは概念的にはリテールメディアを包含しつつ、さらに業種的にも機能的にも発展させた形といってもよいでしょう。