認知症…物忘れなどの“頻度・程度”に注目 基本法成立「正しい理解を」…専門医に聞く
今後、高齢者の5人に1人が認知症になると言われる中、認知症の人が尊厳を保ちながら希望を持って暮らせるように、必要な政策を進めるという「認知症基本法」が6月14日成立しました。認知症になるとどんな変化があるのか?家族はどう接すればよいのかなどを、認知症に長年携わってきた順天堂大学大学院前教授でアルツクリニック東京の新井平伊医師に聞きました。
◆全体の5%弱だが…「治療すれば治る認知症も」
──認知症の種類について 大きく言って、認知症全体の9割くらいを占めるのが4大認知症疾患で、「アルツハイマー病」、「血管性認知症」、「レビー小体型認知症」と「前頭側頭葉型認知症」です。アルツハイマー型が認知症の約7割を占める。 この4大疾患は、今の医学では、根本的には治らない部類に入る。大事なのは、治療や回復が可能な認知症も一部にはあること。例えば脳外科の疾患として、正常圧水頭症、または転んだ後に血液がたまって起こる慢性硬膜血腫、それから、例えば甲状腺機能低下、あとはビタミンB12の欠乏などは、認知症全体の5%に満たないが、治療すると治るというのはとても大事なんです。 認知症の分類というと、もっともっとたくさん実はいっぱいあって、感染症もあるし、以前話題になったように、数年で命を落としてしまうプリオン病とか、原因は無数にあるので、それをきちんと最初に判別することが大切。「認知症=アルツハイマー病」と思う人もいるけど、それは違う。
◆物忘れは誰にでもある。が、ヒントを与えても思い出せないのが認知症
──自分自身、あるいは周りの人が、認知症かなというのは、どうしたらわかるのでしょうか? 例えば夕食に食べたものを忘れるのは、誰にでもあることだと思うんですけど、認知症の場合、“食べたこと自体を忘れる”といわれています。ヒントを与えると「そうだ、そうだ」と思い出すのはまだいい。認知症の場合、“ヒントを与えても思い出さない”と言い換えることもできる。 ただ、リストがあって、“何個当てはまると認知症の疑いだ”というのはあまりあてにならない。住んでいる環境とか、仕事をしているかとか、男性か女性か…などで全然状況が違い、誤差が大きすぎる。 そして、一番大事なのは、以前は、健常者と認知症という二分法だったが、今は、健常者と認知症、その間に「軽度認知障害(МCI)」という考え方になっている。これは微熱と高熱みたいなもの。さらに新しい考え方は、健常者とMCIの間に主観的認知機能低下(SCD)が入り、4つとすること。 例えば、新型コロナウイルスでも平熱の人がいて、潜伏期は平熱ですが、ちょっとだるいなと自分で感じるようになって、ちょっと顔が赤くなって、他人にも気づかれて微熱の状態。それから高熱になって、入院となりますね。 同じようにもの忘れも、自分で気づく段階、他人にも気づかれる段階、そして認知症、つまり仕事や生活に支障をきたしてくる、というふうにレベルがある。