「貯蓄から投資」の流れ後押し 日本郵政、郵便局ネットワーク活用ににじむ期待
15日に発表された日本郵政と大和証券グループ本社の提携拡大を後押ししたのは、「貯蓄から投資へ」の流れの加速だ。政府が「資産運用立国実現プラン」を打ち出し、3月には日本銀行がマイナス金利政策を解除するなど、金融業界の経営環境は好転している。両社はこの機を逃さず、手を携えることで稼ぐ力の強化を目指す。 ■大和、相次ぐ提携発表 「(傘下の)大和アセットマネジメントの運用体制を強化し、運用資産残高を飛躍的に拡大させることが可能になる」。大和証券グループ本社の荻野明彦社長は15日の記者会見で、提携の効果をこう強調した。 大和は日本郵政傘下のゆうちょ銀行などと連携し、投資一任サービスのファンドラップの残高を順調に増やしてきた。今度は同じく日本郵政傘下のかんぽ生命の資産運用の一部を請け負い、運用の高度化を目指す。 国民の資産運用に対する関心はこれまでになく高まっている。1月には新NISA(少額投資非課税制度)が導入されたのに続き、2月には日経平均株価が約34年ぶりに史上最高値を更新。長期金利も上昇傾向にある。 大和は2日前の13日にも、あおぞら銀行との資本業務提携を発表するなど、外部との連携を活発化させている。企業や個人の新たなニーズに応え、成長につなげる狙いが伺える。 ■金融事業の成長は不可欠 一方の日本郵政は、郵便事業の落ち込みによる収益力低下に加え、収益性と公共性の両立という課題を抱える。今回の提携には、金融事業を収益の柱として育てるのと同時に、全国に広がる郵便局ネットワークの強化を目指す狙いもある。 デジタル化の進展などに伴い郵便物は減少しており、令和4年度には郵便事業の営業損益が郵政民営化後、初の赤字に転落した。 その補塡(ほてん)として、金融事業の成長は必要不可欠だ。提携によって大和の商品販売が強化され手数料収入が増えれば、郵便局ネットワークの維持にも寄与する。日本郵政は近年、マイナンバーカードの申請・更新を行えるサービスの導入など、郵便局の利便性向上にも取り組んでいる。 日本郵政の増田寛也社長は「(今回の提携は)トータルでいうと郵便局ネットワーク維持に向けてのプラス材料だ」と期待感をにじませた。(根本和哉、永田岳彦)