Jリーグ・足立修フットボールダイレクター インタビュー(2)Jリーグで目指す若手世代強化への取り組み
昨年まで22年間にわたり広島のスカウト、強化部長を歴任してきたJリーグ・フットボール本部の足立修フットボールダイレクター(52)が、本紙インタビューに応じた。今季最後まで優勝争いを演じた広島での強化における伝統的方針や、ミヒャエル・スキッベ監督(59)を招へいした理由、さらにJリーグで目指す若手世代強化への取り組みなどを聞いた。 今年1月からJリーグのフットボールダイレクターへ就任した足立氏。あらたな道へ進む決意をしたのは広島での目標達成と、Jリーグが迎える転換期を感じたからだ。 「あのスタジアムは僕らの完成形だった。これからサンフレッチェは第2フェーズに入ると」と区切りを付けて広島を後進に託し「それと同時にJリーグのシーズン移行。これは大きな歴史の変更点となるだろうと」とJリーグ入りを決めた。 広島時代からJリーグのフットボール委員を務めた足立氏は、シーズン移行の議論にも参加をしていた。その中で「シーズン移行はチームを強化していく上でも、サッカーの促進にも非常にやらなければいけないものだと思っていた」と話す。 そして、シーズン移行に付随して起きるであろう問題点も予測ができた。「移籍関連はもっと増えると思う。国内ではなく海外とのビジネス展開がされていく。それにアジャストできれば良いが、できないいクラブが多くなるのではと」。 26-27シーズンからJリーグは8月開幕となり欧州のリーグなどと日程がそろう。これにより選手の海外移籍は今よりも活発になると予測される。そして、クラブ側はシーズン日程がそろえば契約期間満了での移籍金ゼロ移籍が増える可能性も考慮しないといけない。 「しっかり外貨(移籍金)を取って、それなりの選手を獲得する資金にできる可能性はあるが、どっちに転ぶかは分からない。やるべきことは準備。若手育成のところをもう一回、しっかりと見ないといけない」 まずJリーグは、しっかりと選手獲得競争ができ、海外移籍の際に生じる移籍金も増えるように99年から行ってきた「プロABC契約」の撤廃を決定。26年からはA契約でも初年度の年俸上限が670万円だったが、プロ契約は上限1200万円に引き上げられる。 そして次の課題は「ポストユース世代」の強化だ。選手入れ替えの速度が増せば、それに伴い若手育成にもスピード感が求められる。「日本のどのスポーツも大学スポーツに依存している。それも必要だが、トップトップの選手をどう育てるかも改革をしていかないといけない」と話す。 U-21のリーグを立ち上げることも案の1つとして「リーグを立ち上げるかは思案中だが、要は真剣勝負をさせているか、試合をこなしているか。それさえできればリーグでもレンタル(期限付き移籍)でも何でもいい」と力説する。 仮にU-21リーグが立ち上がれば、年齢の下限を設けないことで、各クラブはユースから有望株を引き上げて起用することも可能。ユースの試合にはジュニアユース世代の選手が引き上げられるなど、“飛び級”の連鎖によって優秀な人材がより高いレベルでプレーできる可能性も出てくる。 16年からFC東京、G大阪、C大阪がU-23のチームでJ3に参戦した期間もあり、同様のサイクルが生まれて堂安律や久保建英らが経験値を積んだ。当時の問題点等を解消しながら、高校・大学とも違う育成のプロセスをいま一度模索する。 U-21リーグ設立以外でも「Jリーグ選抜を作って海外遠征をやるだけでも違う。例えば代表ウイークで選ばれなかったラージグループの(代表候補)メンバーを選抜して遠征をさせるなど、いろいろなやり方がある」と足立氏。各クラブの事情も考慮し、最適解を探していく考えだ。 「若いときにとにかく真剣勝負をね。いろいろなものを用意してあげるのが大人の仕事かなと思っている。ここが一番伸びてくる年代なので」 競技性の向上と低年齢化が進む世界のサッカー。その潮流の中で日本のサッカーは大きな分岐点を迎える。準備ができないクラブは長い低迷期を迎えるかもしれないが、国内リーグを底上げするチャンスでもある。60クラブが1つの方向性へ向け歩めるか-。足立氏を中心としたJリーグの取り組みに期待が懸かる。