若隆景が大の里の全勝を止めた 土俵際の逆転! 3敗の自身にも優勝の可能性を引き寄せた/秋場所
大相撲秋場所12日目(19日、両国国技館)元関脇で東前頭7枚目の若隆景(29)が、関脇大の里(24)を寄り切って9勝3敗とした。成績次第で大関昇進の可能性が浮上する大の里の初日からの連勝は11で止まった。単独首位は変わらないものの、後続とは1差に縮まった。関脇霧島(28)は大関琴桜(26)を上手投げで破り、10勝目。大の里を追う2敗は、霧島と平幕高安(34)の2人。 残って、こらえて。耐えて、残して攻め返す。めまぐるしく攻守が入れ替わる。館内では悲鳴と拍手が何度も混ざり合った。若隆景が大関昇進を狙う大の里に土をつけ、全勝をストップさせた。 「なんとか残せた。下から下から、我慢して相撲を取れた」 立ち合い。体当たりを受けた若隆景が土俵際まで後退した。だが、腰を落として二本差し。寄り返したところを、大の里に首根っこを押さえつけられつぶされそうにもなった。再び土俵に詰まった若隆景が粘って再度もろ差しに。弓なりになり左からひねるように体を入れ替え、寄り切った。 10秒2の濃密な攻防。土俵下で見守った九重審判長(元大関千代大海)は「若隆景はしっかり足で俵をつかんで攻め返した。雰囲気があったよ。花道から入ってくるとき、きょうはやってやろうという顔だった」。 7場所連続で関脇を務め、令和4年春場所では賜杯を抱き、年間最多勝。「大関候補」の最右翼といわれたが、昨年春場所中に右膝十字靱帯(じんたい)を断裂。4場所連続休場を余儀なくされて幕下まで転落した。7月の名古屋場所で幕内に復帰したばかりで「俵のなかにいる限り、諦めることはない。自分の相撲を取ることだけに集中した」。大の里も5月の夏場所で優勝し、九重審判長は「お互い優勝経験者。先輩のプライドもあったろう」。大の里と2差になり、3敗の自身にも優勝の可能性を引き寄せた。 105キロだった初代横綱若乃花、弟で106キロの大関貴ノ花は俵に足が掛かると地に根が生えたように動かない様子が「かかとに目がある」と表現された。体重差47キロ、182キロの大の里の攻めをしのぎ切った若隆景にも、軽量力士が授かる「目」があった。(奥村展也)