3年目のウクライナ侵攻、北朝鮮派兵で「根本的に違う次元に」 松田邦紀前大使が語る支援、日本にとっての戦争の意味とは?
同時に、開戦当初の2月24日の朝、大使公邸の窓から外を見たとき、いつも見かける女性が犬の散歩をしていました。あれを見た時に非常事態の中にも日常があるし、どんなにつらくても自分の生活があるのだと。その両方を経験しながら生きていくのだと。人間って強いなと思いました。 三つ目は日本が提供した医療器材の引き渡し式典の後に、ウクライナの病院を訪問し、前線から手足を失った兵隊さんを慰問したときのことです。兵隊さんのなんとも言えない悲しいまなざし、これからも生きていかないといけないというまなざしを見ました」 ▽かつての任地ロシアに伝えたいこと ―ロシアでも勤務経験があります。思うことはありますか。 「この戦争は本来あってはならなかったし、起きる必要なかった戦争だと思っています。それにもかかわらずロシアが侵略し、罪のない民がこれだけ苦労している。キーウ近郊のブチャでは多くの市民が虐殺されました。こういうことを忘れて、領土との交換で平和を追求すべきだなんて無責任なことは許されません。私自身の戒めとして覚えておく必要があると感じています。
戦争の実態を知れば、彼ら(ロシア国民)が(侵攻を)容認することはないと思います。ロシアは千年以上の長きにわたって人類の進歩にさまざまな分野で貢献してきました。本来違った形で世界の発展に貢献する力があります。人類の正しい道に戻ってきてくれることを願ってやみません」 × × 松田邦紀(まつだ・くにのり)氏 1959年、福井市生まれ。東大卒。1982年外務省入省。在ロシア大使館勤務、欧州局ロシア課長、駐パキスタン大使などを経て2021年10月から2024年10月まで駐ウクライナ大使。