3年目のウクライナ侵攻、北朝鮮派兵で「根本的に違う次元に」 松田邦紀前大使が語る支援、日本にとっての戦争の意味とは?
―現在の戦況をどう見ていますか。 「地上戦に注目されがちですが、戦争は空でも海でも、サイバー、情報空間でもダイナミックに起きています。一つ一つを見ていくと、ウクライナにとって一番大きな成果は黒海における戦いです。ウクライナが開発した水上ドローンを使って、ロシアの黒海艦隊を3割以上破壊したり、沈めたりしました。現時点では黒海の西半分ではウクライナが穀物輸出を再開できるような状況になっています。ウクライナは海においてはきわめて大きな成果を上げ、維持できています。 空においてはロシアが優勢ですが、ウクライナは自前の防空システム、欧米からの導入で首都キーウを中心に戦略的に重要な場所を守ろうとしています。さらに自前のドローン、弾道ミサイルの開発にも成功しています。 北朝鮮兵の投入により、支援のスピードが遅かった米欧もしっかりウクライナを応援しなければならないという機運が出てきたようにも思えます。米国が容認した長射程兵器によるロシア領内の攻撃でロシア兵は後退し、これまでのように容易にウクライナへの攻撃ができなくなります。ロシアが最近、中距離ミサイルなどを使って攻撃を激化させているのは、トランプ次期政権が戦争をやめるようロシアにも圧力をかけてくるのではないかという焦りもあるように見えます」 ▽戦争3年目、国民の疲れは
―侵攻が2年半以上続く中、ウクライナ国内はどのような雰囲気でしょうか。 「国民の中に疲れがないと言えばうそになります。世論調査でも外交努力をすべきではないかという世論が出てきている。戦争に加えて外交もするというのが5割と言ってもいいと思う。ただ領土で妥協してもいいから和平を達成するという人は少数にとどまっています。ダイナミックに戦争が行われる中で、戦争努力をしっかりと継続するとともに強い立場から停戦和平を追求すべきだという気持ちに固まってきているのが現状です。現時点では国民の望むところとゼレンスキー政権の戦争、外交努力が軌を一にしていると言っていいのではないでしょうか」 ▽気の毒だから助けている? ―ウクライナは米欧に強力な武器を求めていますが、制約のある日本の支援はどのように受け止められていますか。 「個人的には支援という言葉はあまり好きではありません。他人の問題を気の毒だから助けているという印象がつきまといますが、この戦争は決してそうではありません。