3年目のウクライナ侵攻、北朝鮮派兵で「根本的に違う次元に」 松田邦紀前大使が語る支援、日本にとっての戦争の意味とは?
2022年2月に始まったウクライナ侵攻後、最前線で外交を担った松田邦紀前駐ウクライナ大使(65)が東京都内で取材に応じ、約3年間の任期を振り返った。第2次大戦後の国際秩序を崩したロシアの侵攻は、ウクライナだけでなく日本にとっても重要な意味を持つと見る。北朝鮮のロシア派兵により戦争のフェーズが根本的に変わったと危機感を示した。(共同通信・前モスクワ支局記者 根本裕子) 【写真】分断と対立の現代… 共生社会のヒントは江戸時代にある? 実は多様性のある社会だった 「地球の上で人間同士が戦っている場合じゃない」
▽この戦争を終わらせるには ―2021年10月にウクライナに赴任し、間もなく侵攻が起きました。この戦争をどのように見ていますか。 「この戦争を始めたのは他でもないロシアです。国連安全保障理事会の常任理事国である国があからさまに国連憲章、国際人道法に違反して始めた侵略戦争ですから、終わらせるためにはロシアが戦争をやめるべきです。具体的にはロシアが兵を引く。国境の外に出るということをロシアが決断すべきですし、ロシアがそのような決断をするべく国際社会が圧力をかけていくのが、この戦争を終わらせるための基本的な条件だと思います。 ウクライナは戦場において防衛努力をさらに強化している。ロシア領内においても自衛権の発動としてしっかり作戦をやることで、ロシアに圧力をかける狙いです。 ゼレンスキー大統領が示した「平和の公式」、「勝利計画」に基づいて強い立場からの外交も続けています。ウクライナが望むのは公正で永続的な平和を実現すること。これを日本、欧米もしっかりと後押ししていくことに尽きると思っています」
▽東アジアにはゆゆしきこと ―北朝鮮がロシアに派兵し、参戦したと言われています。2025年1月にはウクライナ支援に消極的とされるトランプ米次期大統領が就任します。 「北朝鮮が武器に加えて兵隊を出したということで、これは(ロ朝)協力の次元が根本的に変わりました。この侵略戦争が東アジアの安全保障と完全にリンクしたことを意味します。 日本、韓国からすればきわめてゆゆしきことです。北朝鮮軍が21世紀の一番先端的な統合軍事作戦のノウハウをもって朝鮮半島に戻ってくる。朝鮮半島の安全保障環境が大きく変わります。日本、東アジアに展開する米軍もこのことを真剣に受け止める必要が出てきました。北朝鮮に対して厳しく圧力をかけ、いかなる場合にも対応できるよう準備をすべきです。 トランプ次期政権の対ウクライナ支援は「すぐにやめる」という単純なものではないような気がしています。ウクライナを失うことが米国の安全保障にとってプラスなのかという議論が出てきている。ウクライナが有力な米議員に働きかけを重ねてきたことも効いているのでしょう。他方、戦争をやめさせるという考えのトランプ氏の出現により、停戦和平を念頭に置いて準備しなければならないとウクライナの政権は考えていると思います」 ▽戦いをどう見るか。そしてトランプ氏復帰の影響は