「町中華」の“昭和の味”を演出する「うま味調味料」は悪者なのか?
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。 山本益博のラーメン革命!
「味の悪者」呼ばわりされた「うま味調味料」
このところ改めて「町中華」と呼ばれる大衆中華料理店のラーメン、餃子、炒飯を食べ歩くと、味わいの共通項と後味がおなじであるのに気が付く。それが「うま味調味料」である。味わいを安定させるには、抜群の力を発揮してくれるが、半面、没個性の味になることもしばしばである。 この「うま味調味料」とは「化学調味料」のことで、かつてNHKテレビで使いだしたのがきっかけで、「味の素」という商品名を番組内で使えないため考え出された名称だったという。 それが、「チャイニーズレストランシンドローム(中国料理店症候群)」と呼ばれた、食後の頭痛や吐き気の原因と名指しされ、味の悪者呼ばわりされるようになり、「化学調味料」はいっぺんに人気が衰退していった。各家庭に常備されていた「味の素」の赤い瓶が姿を消していったのも、確かこのころからである。
「町中華」を特徴づける「うま味調味料」が復権!?
その「うま味調味料」が近年復権していることが、近刊の澁川祐子著「味なニッポン戦後史」(インターナショナル新書)に出てくる。現在では、科学的に「頭痛や吐き気」とは無縁で、無害であることは証明されたが、しかし、いまだにSNSで「うま味調味料」の是非論の論争が絶えないという。 現在、ラーメン界では「無化調」と言って「化学調味料」を使わずにラーメンをつくっていることを謳う店があり、いまや、「うま味調味料」に頼らずに味を仕上げることが、ごく当たり前になっている。 いまの「町中華」のブームを作ったきっかけと言われているのが「町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう」(北尾トロ、下関マグロほか著、立東舎 2016年)だそうである。「町中華」のラーメン、餃子、炒飯から「うまみ調味料」が無くなったら、なんとも味気なくなってしまう。