「忖度」に「○○ファースト」……流行語で振り返る2017年日本政治
「フェイクニュース」
嘘のニュースのことである。2016年の米大統領選の際、ヒラリー・クリントン候補に関するスキャンダルの噂など、根拠のないニュースがあたかも事実であるかのように流布された。また、トランプ大統領は、自分に不利なニュースが大手報道機関によって流されると、どんなに根拠があるものであっても「フェイクニュースだ!」と言って切り捨てている。同じ文脈で使われる「ポスト真実」もノミネート語になっている。 日本でも、真偽のほどが定かではない情報がネットで拡散されることが多くなっている。一方、自分に不都合な報道には頬かむりを決め込む者も見受けられるようだ。 フェイクニュースがまかり通るような社会は、一部のデマゴーグ(扇動家)により偏見を持たされた人々が、大挙して極端な方向に走り出す危険をはらんでいる。民主主義の崩壊すら招きかねない。 だからこそ、権力を持つ人たちには「事実」に対して真摯な態度を取ってほしい。われわれ有権者にも、フェイクニュースかどうか見きわめる眼力が必要だ。メディアの側にも、人々の信頼を取り戻していく努力がより一層求められるだろう。 来る2018年には、憲法改正論議が進むことが予想されるし、自民党総裁選も予定されている。内政・外政両面での課題が山積する中、事実に基づき理性的な議論を展開できるような環境が切に望まれる。
----------------------------- ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など