「忖度」に「○○ファースト」……流行語で振り返る2017年日本政治
「○○ファースト」
2016年11月の米大統領選で当選したドナルド・トランプ氏が「アメリカ・ファースト」を掲げていた。自国のことを優先するというこの公約に従い、トランプ大統領は、地球温暖化対策のためのパリ協定からの離脱を表明したり、貿易や投資の自由化を進めるための環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決定したりしてきている。 日本では、小池都知事が就任以来「都民ファースト」を掲げてきていた。小池知事は2017年に入ると地域政党「都民ファーストの会」を結成し、7月の都議選で大勝した。その勢いで衆院選も制するかに思われたが、民進党が希望の党に合流するに際して小池知事(当時は希望の党代表)が一部の議員を「排除する」と発言したことなどから、希望の党は急速に支持を失い、選挙結果は立憲民主党に次ぐ第3党に終わった。 そのほかにも、小池知事が辞職して衆院選に出馬するのか直前まで不明であったり、安倍政権に対抗するのか協調するのかも曖昧であったりと、小池知事の言動には、一貫性を欠く機会主義(オポチュニズム)的な側面が見られた。こうした言動を「自分ファースト」と揶揄する向きもあった。いずれにせよ、このような一貫性のなさが、希望の党への期待をしぼませた主原因と思われる。対照的に、「筋を通す」として枝野幸男氏が立ち上げた立憲民主党には急速に支持が集まっていった。 その意味で、2017年の衆院選は、機会主義的・大衆迎合(ポピュリズム)的な政治のあり方に対して有権者が健全な判断を下したと見ることができるかもしれない。一方、ポピュリズムの政治は世界中を席巻しており、その勢いは2018年も止まらないであろう。われわれがポピュリズムとどのように向き合うか、今後も引き続き問われていくことは間違いない。
なお、小池知事が口にした「アウフヘーベン」もノミネート語となっている。 アウフヘーベンとはドイツの哲学者ヘーゲルのことばで、矛盾するものを統合して、より高い段階に移行することを指す。小池知事が就任してから築地市場の豊洲移転の可否について大きな議論が起こったが、小池知事は結局、豊洲移転・築地再開発という折衷的な結論を出した(2017年6月)。これについて小池氏は「アウフヘーベン」の語を用いている。また、小池氏の側近であった若狭勝前衆院議員が新党設立を準備していたが、小池氏は突然希望の党を結成した(2017年9月)。このとき、若狭新党と希望の党との関係を聞かれて「アウフヘーベンするものだ」と答えている。繰り返すが、アウフヘーベンの本来の意義は、矛盾を統合した後にもっと高い段階に移行することにある。単に足して2で割るだけの折衷案はアウフヘーベンとは呼べないのではないか。