「忖度」に「○○ファースト」……流行語で振り返る2017年日本政治
「魔の2回生」
中川俊直氏、豊田真由子氏、武藤貴也氏、宮崎謙介氏ら、当選2回目の衆院議員が立て続けに暴言や不倫などのスキャンダルを起こした。彼(女)らは2012年の総選挙で初当選し、2014年の選挙で再選された「安倍チルドレン」である。 選良たる国会議員なのに品格に欠ける人たちが多いのは言語道断であるが、選挙制度に関わる構造的な問題もあることに注意してほしい。 現在の衆院の選挙制度は、定数1の小選挙区制と比例代表制を組み合わせた「小選挙区比例代表並立制」という制度であり、そのうち小選挙区の比重が高い。小選挙区制では無党派層の支持を得た政党が大勝することが多いため、世論の風向きによって選挙ごとに大きな揺れが起こりやすい。そのため、大量の新人議員が一挙に当選しやすいのである。2009年の総選挙では民主党が大勝して同党に新人議員が数多く誕生したが、2012年の総選挙では自民党が大勝したため数多くの安倍チルドレンが生まれた。 派閥の衰退も関係する。かつての衆議院は、定数がおおむね3~5名の「中選挙区制」であった。中選挙区では同じ選挙区の中で複数の自民党候補者が争っていたため、各候補者は党よりも派閥に頼るようになり、派閥が発達した。派閥政治の弊害には世論の批判も強かったが、一方で派閥には若手議員を教育・訓練する機能もあった。 しかし小選挙区制を中心とする現在の選挙制度になり、派閥の力は衰えた。それに伴い、若手議員を教育・訓練する派閥の機能も失われていった。政治家としての立ち振る舞いに難がある「魔の2回生」が誕生する背景にはこのような事情もある。 現在の衆院の選挙制度である小選挙区比例代表並立制は、「政権交代可能な政治」「政党本位・政策本位の選挙」を実現することを目的として、1990年代半ばに導入された。確かに政権交代は2009年に実現し、選挙も政党本位・政策本位で争われる面が強くなった。しかし最近は、野党が分裂する一方で自民党が勝ち続けており、与野党間の競争は不十分である。「忖度」を生む土壌となっている「官邸1強」体制も小選挙区制に支えられている面が大きい。小選挙区制では、公認権を持つ党執行部が一般議員に対して大きな影響力を行使できるためである。「忖度」や「魔の2回生」が脚光を浴びる今は、選挙制度のあり方について考え直す好機かもしれない。