米FRBが利下げ、3会合連続 インフレリスクが懸念されるなか
アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は18日、0.25%の利下げを発表した。インフレ再燃のリスクがあるなか、景気刺激のために3会合続けての利下げに踏み切った。 これにより、アメリカの政策金利の誘導目標は4.25~4.5%となる。 FRBは今年9月に4年半ぶりに政策金利を引き下げた。価格安定化の進展と経済の弱体化を防ぐための措置だとしている。それ以降、今回の引き下げで下げ幅は計1%となった。 その後の報告によると、雇用創出数は予想以上に堅調であり、価格上昇も続いている。 一方、FRBのジェローム・パウエル議長が、来年の利下げ回数が予想より少なくなる可能性が高いと警告したことを受け、アメリカでは株価が急落した。 パウエル議長は記者会見で、「我々はプロセスの新しい段階に入っている」と述べた。 「ここからは慎重に進み、インフレの進展を見守ることが適切だ」 物価上昇率を測るインフレ率はここ数カ月、上昇を続けており、11月には2.7%に達した。 アナリストらは、ドナルド・トランプ次期米大統領が支持する政策、特に減税や広範な輸入関税の計画が、物価上昇圧力を高める可能性があると警告している。 また利下げが借り入れを容易にし、企業や家庭がクレジットを利用して支出を増やすことを奨励することで、その圧力をさらに高めるリスクがあると指摘している。 需要が増加すれば、通常は価格も上昇する。 パウエル議長は今回の利下げを擁護し、過去2年間の雇用市場の冷え込みを指摘した。 しかし、今回は「判断が難しかった」とし、政権交代に伴う不確実性があることを認めた。 パウエル議長の発言を受けて市場は下落した。ダウ工業株30種平均は2.58%、S&P500種はほぼ3%、ナスダックは3.6%、それぞれ下落した。 格付け会社フィッチ・レーティングスの米経済調査部門責任者であるオル・ソノラ氏は、ホワイトハウスの政策に関する疑問が先行き不透明感を高めているため、FRBが利下げを「一時停止」することを示唆しているように感じると述べた。 また、「成長は依然として良好で、労働市場も健全だが、インフレの嵐が迫っている」と説明した。 18日の利下げは、トランプ次期大統領が就任する前にFRBが行う最後の利下げとなった。会合では金融政策委員1人が正式に反対した。 トランプ次期大統領は、11月の選挙で物価と金利の引き下げを約束して勝利した。しかし9月以降、住宅ローン金利は上昇しており、借り入れコストは比較的高いままになるとの予測のとおりとなっている。 FRBがこの日発表した経済見通しは、2025年末までに主要貸出金利が3.9%にまで低下すると予想。これは3カ月前の予測の3.4%より高い。 一方、来年のインフレ率は前回予想よりも高い約2.5%になるとみてており、依然としてFRBの目標である2%を上回っている。 ブリーン・キャピタルの主任経済アドバイザーであるジョン・ライディング氏は、市場を動揺させる可能性が高かったかもしれないが、今回の会合では利下げを見送る方が賢明だったのではないかと指摘した。 「インフレのピークから現在の米経済の状況まで、非常に大きな進展があったが、(利下げは)その進展を放棄するリスクがある。場合によっては部分的に逆戻りする可能性もある」 「経済は力強いように思う。(中略)急ぐ必要があるのか?」 ■英中銀は金利据え置きの予想 19日には、英イングランド銀行(中銀)が最新の金融政策を発表する予定。イギリスでも最近、物価上昇が見られる。 イングランド銀行は、主要金利を4.75%で据え置くと広く予想されている。 英シンクタンクの国立経済社会研究所(NIESR)のアソシエイト・エコノミストであるモニカ・ジョージ・マイケル氏は、英中銀はアメリカよりも高い賃金上昇率とサービス価格の上昇に直面していると述べた。 また、政府の計画の一部である最低賃金の引き上げもインフレに圧力をかけると付け加えた。 「イングランド銀行は慎重であろうとしている」 一方で、トランプ次期大統領の関税計画に言及し、アメリカにもインフレリスクが存在すると警告した。 前出のライディング氏は英中銀について、FRBとは異なり失業率を考慮する必要がないため、目の前の状況により明確に対応していると考えていると述べた。 「イングランド銀行は、現在のFRBよりも慎重な中央銀行だと言える」 (英語記事 US makes third interest rate cut despite inflation risk )
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