「自分の容姿を受け入れられない」「妊活が苦しい」というお悩み。現役僧侶による救われる言葉
「自分をありのままに受け入れることができない」という悩みは、多くの人が抱えるもの。「現成公案」という言葉には、苦しみを受け入れ、今ある自分を大切にすることの大切さが説かれています。そこで今回は、YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」が人気の僧侶・大愚和尚の「今、あるもの」を受け入れることに悩む人々に届けたい“禅語”をご紹介します。
ありのままを受け入れることができずに悩む人に贈る禅語
曹洞宗の開祖・道元禅師による膨大な著書『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』の中に「現成公案(げんじょうこうあん)の巻」というものがあります。現成公案とは、自然界にあるものすべてをありのままに受け入れること、そのことがすなわち悟りにつながるという意味の、禅の根幹を表す言葉です。 たとえ苦しみがやってきたとしても、自分はそれを受け入れるだけの度量の大きさがあると思って受け入れていく、という苦しみとの向き合い方を説いた言葉でもあります。 私はこの道元禅師の含蓄ある言葉を、自分自身をありのままに受け入れることができずに悩む人々に届けたいと思います。 自分を観察していくと、その容姿から性格にいたるまで、気になることや気に入らないことばかりが目につきます。「自分はこうあるべき」という理想があれば、たりない部分があるのは当たり前で、多くの悩みや苦しみが、現状を否定することから発せられていくのです。
大切なのは、すでに「あるもの」に気づくこと
たとえば、こんな悩みが寄せられています。「太っている」と好きな人に言われて引きこもりがちになってしまった10代の女の子。自分の顔が気に入らなくて、一度整形手術をしたら、最初に気づかなかった部分が目についてしまい、何度も整形手術を繰り返しているという20代の女性。 見た目の容姿はその人の構成要素のひとつですが、器量のよしあしを測る物差しはひとつではありませんし、湧き出る自信や素直さなど、内面に宿すもので見た目の印象はどんどん変わるものです。 また、夫婦の間に子どもを授かることができなくて、苦しい妊活に耐えているけれど、夫婦仲に亀裂が入ってしまったという40代の女性。一方では子どもがひとり生まれたあとに、なかなかふたり目を授かることができなくて、精神的に追いつめられてしまった30代の主婦の方も。 子宝に恵まれた家族を見ると、うらやましくなってしまう気持ちは理解できます。しかし、そこにとらわれてしまい、苦しめば、周囲の人々も同時に苦しめ、もっと自分を苦しめることになります。 私自身、寺に生まれた「現成」を否定しまくってきた人生の前半戦でしたから、すんなりとありのままの現成を受け入れられない人の気持ちは本当によくわかります。しかし、悩んで解決するならともかく、多くの場合は、天から与えられた現成を受容していくしかないことが多いのです。 ですから、自分に行きづまったときは「現成公案」という言葉を思い出して、よいことも悪いことも、ありのままに受け入れてみることです。ないものをねだるのではなく、すでにあるものに気づく、そして受け入れる。そこからすべてが始まります。