睡眠不足の上司は部下に当たり散らし、心を落ち着かせている...「仕事と睡眠」の驚きの関係
睡眠不足は死亡リスクを増加させる
リーダーがおさえておくべきは、「睡眠」「食事」「運動」「休み」の4つです。 まず、睡眠から始めましょう。 寝る前にSNSや仕事のメッセージに目を通すことが多く、どうしても就寝時間が遅くなりがちという人も少なくないでしょう。睡眠時間も6時間を確保できればいいほうで、朝、起きたときに、体のだるさが残ることも多いということはないでしょうか? こうした睡眠習慣では、残念ながら、自分の健康を守れないことがわかっています。 睡眠の専門家15人が、睡眠と健康にかかわる学術論文5314本を精査し、共同で次の声明文を出しています。 「成人は定期的に7時間以上の睡眠をとるべきである」 個人差はあるでしょうが、1つの目安として7時間という基準が示されています。 その理由は、睡眠時間が7時間を定期的に下回ると、肥満、糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中、うつ病、死亡リスクの増加、免疫力の低下などにつながるからです。 さらに、7時間未満の睡眠はパフォーマンスの低下、ミスの増加、事故リスクの増加とも関連していました。 こうした悪影響のリストをみると、ゾッとしますね。いかに睡眠が健康にとって大切かが、改めて確認できます。厚生労働省の調査によれば、睡眠時間が7時間に達していない人の割合は、日本人のなんと、半分以上にのぼります。ですから、みなさんがこの7時間のラインを下回っていたとしても何ら不思議ではありません。 睡眠不足は蔓延しているのです。
睡眠不足は人間関係にも悪影響を及ぼす
リーダーに心に留めていただきたいポイントは、睡眠不足は、メンバーとの人間関係にひびを入れるということです。 ワシントン大学の研究グループは、88人のチームリーダーとそのメンバーを2週間にわたって調査しました。 ここで驚くべきことがわかります。リーダーがよく眠れないと、その翌日、メンバーに当たり散らしていたのです。メンバーに意地悪な態度や、敵対的な態度をとりやすく、威圧的で攻撃的な行動をとる頻度が増えていました。 なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。この研究によれば、よく眠れなかったリーダーは、気力が十分でないために、メンバーに配慮するような言動がとれなくなっていたのです。 リーダーの睡眠不足の代償を、メンバーが払っていたのです。 別の調査では、リーダーがメンバーに当たると、一時的にリーダーの心が安らぐという結果も出ています。 リーダーとして、きちんと振る舞うにはそれなりに自制心を利かす必要があります。でも、メンバーに当たり散らすとき、この自制心がはずれます。だから、エネルギーの節約になり心が休まるのです。 もちろん、このような安らぎが健全なわけがありません。実際、この安らぎは一時的な効果しかありませんでした。メンバーに当たっていたリーダーは、1週間後、逆にストレスが増え、やる気も落ちていたのです。 この現象は、まるでドラッグの効用とそっくりです。ドラッグもメンバーに当たる言動も、一時的に安らぎを得られるものの、長期的にみればその人自身を苦しめます。メンバーも、もちろん不幸です。