「人間は基本、皆しょうもない」森田剛×赤堀雅秋が初タッグで挑む舞台『台風23号』に迫る!
“逆ディズニーランド”なファンタジー 「こういうヤツいるかも」と感じてもらえたら
――赤堀さんはこれまでシアターコクーンという空間で、5作品を書き下ろし、演出・出演されて来ました。今回はTHEATER MILANO-Zaに変わりますが、そうした劇場空間の違いは劇作に影響するのでしょうか。 赤堀 する場合もあるし、それをシャットアウトする場合もあります。コクーンで芝居をやった最初の頃は、自分の素養にない劇場空間で、背伸びをしてモノを作っていた記憶があるんですね。でも3作目の『世界』(2017年)の頃から、ちゃんと地に足をつけて自分の書けるものを書かなくてはいけないな、という思いになりました。今回は新しい劇場ですが、別にその劇場に合わせてということではなく、自分がやれることをやるだけだなと。小津安二郎さんの「豆腐屋は豆腐しか作れない」という言葉じゃないけど、こんなどうでもいい、ちまちました話を演劇界でやっているのはたぶん僕くらいしかいないでしょうから(笑)。そこは堂々と、どうでもいい話をやりたいなと思っています。 ――作者の言う“どうでもいい話”に、観客は毎回ボディブローのようにじわじわ染み渡る衝撃を受けています。今回もどんな体感が待っているのか、楽しみです。 赤堀 演劇にはいろんな種類があって、賑やかで観ていて楽しい舞台もたくさんあります。その中で、舞台上の僕らがそこで一生懸命に生きているだけ、ただそれだけの瑣末な描写を観て、こういう演劇もあるんだなと、森田君や間宮君のファンの方々に新鮮に楽しんでもらえたらいいなと。 森田 そうですね。僕のことを長く応援してくれて、僕の舞台を観に来てくださるお客さんは、結構舞台に限らずいろんなものを観ている方々のように思うんですね。だからと言ってその方達に向けてやるという考えはないですし、赤堀さんの作品のファンの方や、初めて僕や間宮君を見るという方にも、どう見られたいと意識することは何もないんですよ。こうしようとか、こう見られたいとかいう考えは僕にとってはすごく邪魔なものだし。自分としては赤堀さんのやり方にしっかりついていけるようにする、それだけですね。舞台上で、その役としてどう存在するかが大事だと思っているので。“こういうヤツいるかも”、そんなふうに感じてもらえたらいいなと思います。 赤堀 僕の中では自分の作品を“逆ディズニーランド”と思っていて(笑)、自分の中ではファンタジーなんですね。けっしてキラキラした世界でも清潔感のある世界でもなく、しょうもない人たちのしょうもない描写でしかないんですが。でも、そういう愚かさやしょうもなさを見て、「自分のほうがマシだな」とか「俺も生きていていいんだな」って思ってもらえたら。そういうファンタジーになればいいなという思いで作っているので、ぜひ楽しみにしていてください。 取材・文:上野紀子 撮影:源賀津己 (森田剛)ヘアメイク:TAKAI スタイリスト:松川総 <公演情報> Bunkamura Production 2024 『台風23号』 作・演出:赤堀雅秋 出演:森田剛 間宮祥太朗 木村多江 藤井隆 伊原六花 駒木根隆介 赤堀雅秋 秋山菜津子 佐藤B作 【東京公演】 日程:2024年10月5日(土)~10月27日(日) 会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階) 【大阪公演】 日程:2024年11月1日(金)~11月4日(月・休) 会場:森ノ宮ピロティホール 【愛知公演】 日程:2024年11月8日(金)・11月9日(土) 会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール