譲歩次々、戦略なき少数与党 「自公国」に不穏な空気も 政治とカネ、幕引き遠く〔深層探訪〕
臨時国会のヤマ場だった2024年度補正予算が17日に成立し、政治資金規正法の再改正についても一定のめどが立った。少数与党の自民党は多数派形成の必要から譲歩を連発。石破茂首相は主導権を握れず、今国会で「政治とカネ」の幕引きを図るシナリオは崩れつつある。 【ひと目でわかる】13兆9433億円、補正予算案の概要 ◇熱弁首相、その裏で 「一生懸命、公開方法工夫支出を熱弁していたのは何だったのか」。17日、補正予算案の採決を前にした参院予算委員会の審議で、立憲民主党の川田龍平氏は首相にこう迫った。 首相は16日の参院予算委で、外交上の秘密などが関係すれば非公開を認める同支出について、「党による外交は必要。人権保護も極めて大事だ」と繰り返し主張。一方、自民は野党に同支出の新設断念を伝達し、同日夕の衆院特別委員会で修正した自民案を示した。 実際、首相は15日夜に森山裕幹事長らとひそかに対応を協議。同支出の必要性にこだわったものの、譲歩以外の打開策は見いだせなかった。川田氏の追及に、首相は「少数与党なので言ったことがそのまま通る状況にない」と釈明。政府関係者は「首相の言葉の重要度が下がっている」と認めた。 ◇通常国会に火種 経済対策の裏付けとなる今年度補正予算は国民民主党などの賛成を得て、17日に成立した。ただ、自民が「部分連合」として期待する「自公国」の枠組みには不穏な空気が漂う。 経済対策に明記された所得税非課税枠拡大のための「年収103万円の壁」見直しを巡り、17日に開かれた自民、公明、国民民主3党の税調会長会談で、国民民主側が自公の譲歩がないと猛反発。協議の「打ち切り」を宣言する事態となった。 11日の3党合意では、国民民主が主張する非課税ライン178万円の実現を目指し、来年から引き上げるとしていた。17日、国民民主の榛葉賀津也幹事長は記者団から25年度予算案への対応を問われ、「(賛成は)無理だ」と語気を強めた。これに対し、自民内からは度重なる国民民主の揺さぶりに「礼儀を知るべきだ」(幹部)といら立ちの声が漏れる。 ◇ネックは企業献金 石破政権は同じく補正に賛成した日本維新の会が看板政策に掲げる教育無償化に関する協議を通じて、来年1月召集の通常国会をにらみ、協調実現に秋波を送る。 ここでネックになるのが「政治とカネ」だ。政権内でも「べた折れ」(首相官邸幹部)との声が漏れる規正法の再改正で、自民が最後まで存続に固執した企業・団体献金の扱いは来年3月まで持ち越され、攻防の舞台は通常国会に移る。 維新は企業・団体献金禁止を政治改革の目玉と位置付けており、吉村洋文代表(大阪府知事)は17日、記者団に「抜け道のない企業・団体献金禁止法案を通常国会に出す。がんがん議論させてもらいたい」と訴えた。 17日に開かれた衆院政治倫理審査会には、旧安倍派の稲田朋美元防衛相ら4人が出席し、派閥の政治資金パーティー券収入の還流の経緯は把握していなかったなどと説明。維新の斎藤アレックス氏は「再調査など真相究明を求めていきたい」とくぎを刺した。 立民は「政治とカネ」の対応で「維新とは共同歩調が取れる」(幹部)と共闘を模索する構え。「通常国会はいくつ山があるのか」。自民幹部は危機感を募らせた。