藤原竜也、『全領域異常解決室』は新たな代表作に 『デスノート』夜神月と対になる人物像
藤原竜也が『全領域異常解決室』で徹する“静”の演技
本作での藤原は、抑制の効いた静的な演技に徹しているように思う。しかしだからといって、控えめなわけではない。先述しているように、興玉が口にするセリフは謎めいたものが多かった。そこには何か“余裕”のようなものがあった。藤原が自らの演技を抑制することで興玉というキャラクターは冷静さを得ることができる。すると、謎めいていながらどんなときでも冷静な興玉が発する言葉は、より私たちに違和感を抱かせることになるはず。藤原はこれに徹してきたのではないだろうか。 そのうえ、彼の長い手足が生み出す動きはしなやかで軽やか。これもまた私たちに人間離れした何かを感じさせてきたのではないだろうか。ふいにやってくるアクションシーンももちろんだが、個人的には普段の興玉が屋外で歩行する姿や、相方である雨野小夢(広瀬アリス)に何かを語るときの身のこなしのほうが印象に残っている。藤原のセリフ回しには澱みない流麗さを感じるが、それは日常のアクション(所作)にもいえること。本作における藤原竜也の演技はすべてが美しすぎるのだ。メンタルもフィジカルも、人間離れしているのである。 かつて藤原といえば、彼の代表作のひとつである『デスノート』(2006年)において、人間が侵してはならない領域に足を踏み入れた。演じた夜神月は天才的な人物だったが、最終的には感情的で人間らしく悶えてみせた。『全領域異常解決室』の興玉雅は、これの対になるキャラクターだといえるだろう。藤原の新たな代表作になるかもしれない。
折田侑駿