すぐ「すみません」と言う日本人、謝らないフランス人。欧米社会の「謝罪しない美学」とは?
約束の時間に遅れるときや、飲食店で注文ミスがあったとき。日本人であれば、第一声で「すみません」と謝るのが普通です。しかし筆者が暮らすフランスでは、謝罪の言葉を耳にする機会がほとんどありません。 【写真を見る】フランス人の「質素」な朝ごはん 例えば、過去に筆者がフランス人と待ち合わせをした際、相手が30分ほど遅れてきたことがありました。そのとき相手が述べたのは、「どうして遅れてしまったか」という長い説明だけ。謝罪の言葉はありませんでした。 フランス生活に慣れてきたとはいえ、このような場面に遭遇すると、日本との文化の違いを改めて感じてしまいます。
◆フランス人の謝らないシチュエーション例
では、どのようなシチュエーションで謝罪がなかったのか。筆者が実際に体験した出来事をご紹介します。
▼風邪をうつしたとき
誰かに風邪をうつしてしまっても、フランス人は基本的に謝ることをしません。たとえそれが“クラスターの原因”になったとしてもです。筆者もフランス人から風邪をうつされたことがありますが、「ごめんね」という言葉の代わりに「よく休んで」と言われました。 フランスでは、風邪は自然現象と捉えられることが多いようです。他人を責めるよりも、「自分も風邪を引くリスクを理解している」という暗黙の了解があるのだと感じます。
▼スーパーで不良品を見つけたとき
スーパーで卵を手に取ったときのこと。確認のためケースを開けてみると(フランスでは紙パックが一般的)、いくつかの卵の殻が割れていました。それを店員さんに伝えたところ、「そのまま置いておいてください」というシンプルな返答が。もちろん、謝罪の言葉はありません。 店員さんとしては、「自分が直接割ったわけではないから、謝る必要はない。自分に非はない」と感じたのでしょう。会社の一員として謝罪することを当然と考える日本人とは、価値観が大きく異なります。
▼公共交通機関が遅れたとき
日本では、電車や地下鉄が遅延した場合、「ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」という謝罪のアナウンスが流れます。しかし、フランスではこれが一切ありません。遅延の理由が事故であろうとストライキであろうと、公に謝ることをしないのです。 自動改札機や発券機が故障している場合も同様です。こうした状況では、「他の機械を使ってください」や「いつ直るか分かりません」といった対応をされることがほとんどです。フランス人の間では、「自分は直接かかわっていないのだから」という意識が働いているのだと思います。