韓国、検察・警察がそれぞれ内乱罪捜査へ…高捜処「事件を引き渡すべき」
「12・3非常戒厳」宣言を尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に建議した当事者とされる金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防部長官をめぐり、検察は緊急逮捕を通した身柄確保に、警察は家宅捜索にそれぞれ動くなど捜査の主導権争いが激しい。高位公職者犯罪捜査処(高捜処、処長・呉東運)までが検察・警察に向けて今回の事件捜査を高捜処に移牒するべきだとして競争に加わった。 検察非常戒厳事態特別捜査本部(本部長、朴世鉉ソウル高検長)は8日、出頭した金前国防部長官を調査した後に緊急逮捕した。また、尹大統領を内乱罪容疑の被疑者として立件した事実を確認した。朴本部長は「この事件の事実関係を簡単に説明すれば、公務員が職権を乱用して国憲紊乱を目的に暴動を起こしたということ」とし「その二つが職権乱用と内乱罪の構成要件であり、検察庁法によると職権乱用を含めて検事が捜査できる犯罪と直接関連性がある犯罪は当然検事が捜査できる」と強調した。 警察国家捜査本部(国捜本)担当捜査チームもこの日午前9時ごろ、金前長官の国防部事務室と官邸、ソウル弘恩洞(ホンウンドン)の自宅などを家宅捜索するなど本格的な捜査に入った。 検察と警察が同じ資料の確保に動いたケースもある。検察特捜本はこの日、3日夜から4日未明にかけての非常戒厳当時の国会内閉回路(CC)TV映像などの資料提出を国会に要請した。ところが警察国捜本も前日、国会に同じ資料を要請し、国会が提出を準備中と伝えられた。 検察・警察が捜査の主導権を確保するために競争する姿を見せ、捜査難航の懸念も出ている。内乱罪の場合、大統領室と国防部、国軍防諜司令部などの非常戒厳事態の関係者が責任の所在をめぐり異なる主張をする中、捜査の初期に事実関係の把握が急がれる。また証拠隠滅が懸念され、関連文書などの把握と確保を急ぐ必要があるが、検察・警察が主導権争いをしている。 警察は内乱罪を直接捜査する権限がある機関という点を強調している。特に国捜本の関係者は「6日に検察から捜査効率性レベルで合同捜査の提案を受けた事実があるが、捜査の信頼性・公正性などを総合的に考慮して断った」とし「法令上内乱罪は警察の捜査管轄であるだけに、警察が責任を持って捜査するのが正しいと判断していて、現在のところ合同捜査を考慮していない」と一線を画した。 こうした状況で高捜処はこの日の公示で「重複捜査の憂慮を解消し、捜査の迅速性、公正性確保などのために移牒要請権を行使した」と明らかにした。高捜処設置法第24条「高捜処捜査と重複する他の捜査機関の犯罪捜査に対し、高捜処長が捜査の進行程度および公正性などに照らして高捜処で捜査するのが適切だと判断して移牒を要請する場合、該当捜査機関はこれに応じなければならない」という規定を根拠に挙げた。 ただ、高捜処の要請に検察・警察が素直に応じるかは未知数だ。専門家らは重複・競争捜査による非効率と混乱を懸念している。韓国刑事・法務政策研究院のキム・テグン研究委員は「捜査権調整で複数の捜査機関の競争的捜査が避けられない側面がある」とし「いくつかの刑事司法機関が不信感を受ける状態で、それぞれの機関が国民の信頼を得る機会になったということ」と評価した。続いて「ただ、捜査が進行すれば協議体であれ、いかなる形態でも単一の主体を通した捜査が必要な時がくるだろう」と話した。