常石造船、念願の水槽を取得。三井造船昭島研究所を傘下に
常石造船は23日、連結子会社の三井E&S造船が、三井造船昭島研究所(東京都昭島市)の全株式を取得したと発表した。同社株を保有する三井E&Sから三井E&S造船が株式譲渡を受けた。三井造船昭島研究所は、船型開発で必要な水槽施設などを保有。常石造船はこれにより、幅広い水槽試験実施など、流体設計分野での能力を増強するほか、商品開発・競争力の向上を図る。 常石造船は今回の連結子会社の株取得により、潮流水槽などを使用することで、洋上風力発電や波力発電設備の開発など、船舶建造以外の新領域参入も視野に入れる。 三井E&Sは三井E&S造船株を34%保有している。 三井E&Sは、三井造船昭島研究所の全株式を三井E&S造船に譲渡したものの、設備や土地については保有し続けている可能性がある。 常石造船は、三井E&S造船と2018年5月に商船事業分野で業務提携を締結した。当時の河野健二社長(現ツネイシホールディングス会長)は本紙インタビューで、「船型開発では、模型を作り、大きな水槽で実験する必要がある。当社は現在、日本造船技術センターや大学などから借りているが、需要が高まっており利用する際には待たなければいけない」と説明。業務提携により三井造船昭島研究所の水槽を利用したい考えを示していた。 常石造船と三井E&S造船はさらに21年10月、資本提携。常石造船は、三井E&S造船の親会社三井E&Sホールディングス(現三井E&S)から三井E&S造船株を49%取得した。22年10月に17%分を追加。常石造船は三井E&S造船の株式を66%保有する筆頭株主となり、連結子会社化した。 三井造船昭島研究所は、三井E&Sの子会社という位置付けとなっていたが、常石造船は三井E&S造船との資本業務提携後も三井造船昭島研究所の水槽などの利用は限定的だったとみられる。今回、連結子会社の三井E&S造船の100%子会社となったことで、水槽などの柔軟な利用が可能となる。
日本海事新聞社