アングル:AI電力需要で地熱発電新興が急成長、石油大手はガス投資拡大
Mrinalika Roy Seher Dareen [19日 ロイター] - 地熱エネルギー新興企業は、電力を大量に消費するAI(人工知能)データセンターを抱えるハイテク大手の需要で急成長している。ただ、石油大手は天然ガスへの投資を倍増させており、長期的な投資の先行きは不透明だ。 メタ、アルファベット傘下のグーグルは、データセンターに電力を供給するため地熱発電を提案する新興企業と提携している主要なハイテク企業だ。大規模なデータセンター事業者も、AIのエネルギー需要を満たそうと競争しており、その過程でさまざまなクリーンエネルギー技術開発を加速させている。 地熱新興のフェルボ・エナジーに投資している米シェールガス会社デボン・エナジーのトレイ・ロウ最高技術責任者(CTO)は「地熱は天然ガスとともに需要を満たすために必要なエネルギーミックスの一部になり得る」と話すが、新興企業は依然として高い初期費用、特に掘削費用とプロジェクトが承認されるまでに長い期間がかかるという問題に直面している。 このため、2020年以降、地熱発電プロジェクト全体に7億ドル強の資金が拠出されたとアナリストは推定しているが、最近は当初の熱狂はなくなっているという。 <メジャーは天然ガス強化> 一方、シェールオイルのトップメーカーであるシェブロン、ダイヤモンドバック・エナジー、エクソンモービルも、電力会社と温室効果ガスの排出を削減する炭素隔離プロジェクトを組み合わせるために協力することを提案し、電力の主力燃料として天然ガスを提唱し始めている。 地中でのエネルギー貯蔵と地熱ベースロード技術を開発するセージ・ジオシステムズのシンディ・タフ最高経営責任者(CEO)は「シェブロンやシェルとは話をしたが、超メジャー企業は様子見のようだ」と話す。 セージは最近、米シェールガス生産会社エクスパンド・エナジー(旧チェサピーク・エナジー)が主導する3000万ドルの資金調達を終え、1月に新たな調達ラウンドを開始する予定だ。 12月には、コロラド州を拠点とする、既存の石油・ガスインフラを利用して地熱発電を行うグラディエント・ジオサーマルが、ノースダコタ州にある石油・ガス採掘場の一つで発電を支援するため、コード・エナジーにサービスを提供すると発表した。 グラディエントのジョハンナ・オストラム最高執行責任者(COO)は、中堅・中小の独立系エネルギー企業の大半は、転売目的の発電ではなく、自社の電力需要のために地熱エネルギーに関心を持っていると述べた。 <コスト面で競争力> 地熱はコスト面に競争力を持つ。コンサルタント会社ライスタッド・エナジーによると、米国における従来型地熱プロジェクトの平均電力コストは、メガワット時当たり約64ドルで、平均約77ドルのガス複合発電や、約182ドルの原子力発電など、他のエネルギー源と比べて競争力がある。 地熱発電の業界団体ジオサーマル・ライジング幹部のブライアント・ジョーンズ氏によると、投資環境が改善されたおかげで、この2年間で60以上の新興企業が誕生したという。 昨年発表された報告書によると、16年から22年の間に米国で設立された22の地熱新興企業のうち10社がテキサスに本社を置いている。 現在の商品市況の下落は、地熱発電で収入源を多様化しようとするシェールガス企業の増加を促す可能性もある。 この分野では超党派の関心も高まっている。関連する2つの法案が最近下院を通過し、上院の承認を待っている。これらの法律が成立すれば、国内での地熱発電事業の立ち上げが容易になる。 デボンのロウ氏は「政府の優遇措置と民間投資が増加しており、価格設定の確実性が高く損失の可能性が低い資産の組み合わせは、多くの投資家の興味をそそる」と述べた。