[特集/最強ボランチは誰だ 01]良い守備的MFが、良い結果を残す 強豪クラブに欠かせないボランチたち
リヴァプールを支える2人 遠藤加入でマッカが輝く
リヴァプールに加入し、同じ効果をもたらしたのが遠藤航だ。[4-3-3]のリヴァプールはアンカーの適任者が不在で、シーズン当初はアレクシス・マクアリスターが務めていた。プレイエリアが広く、トランジションが早いマクアリスターは十分に役目を果たしていたが、彼の攻撃力を生かすためにはインサイドハーフで起用したかった。これを可能にしたのが遠藤の加入だった。 遠藤をアンカーに、マクアリスターとドミニク・ショボスライがインサイドハーフを務める。いまのリヴァプールはこの3名で中盤を構成するのがベストで、実際に結果にもつながっている。遠藤、マクアリスターは“わかりあえる2人”で、プレスにいくポイント、早さが見事に連動している。 前線の誰かがボールロストする→マクアリスターが素早く回収にいく→ボールがこぼれる→遠藤がフォローする。遠藤とマクアリスターを入れ替えても成立する流れで、この2人は同じサッカー感でプレイしている。シティとの上位対決でロドリ、ケビン・デ・ブライネに仕事をさせなかったことで、2人の補完性にさらに注目が集まることとなった。 中盤での回収が早いことで、最終ライン、前線の選手も楽になる。モハメド・サラー、ダルウィン・ヌニェス、ルイス・ディアスの3トップにはどの試合でも多くのチャンスがある。今季は決定力を欠いている面があり、この3人が決めるべきところを決めていれば、いまごろリヴァプールは首位独走だったかもしれない。
衰え知らずのクロース ギュンドアンも躍動
ラ・リーガで首位を走るレアル・マドリードには、オーレリアン・チュアメニ、トニ・クロースがいる。チュアメニは持って生まれた身体能力の高さに加えて、ボールタッチがやわらかくて足元の技術力が高い。レアルは[4-3-3]を基本とするが、万能型のチュアメニはアンカーだけでなく、CBでも稼働する。 プレイ、動きに変な癖がなく、シンプルに身体をぶつけてボールを奪い、持ち過ぎることなく前線に効果的なパスを出す。無論、自分で運べるときは前方にドリブルし、コースが見えたら多少の距離があっても積極的に狙う。チュアメニのロングシュート、ミドルシュートはエッ? というタイミング、場所から放たれ、ゴールネットを揺らす。 相手DFにとって“お手上げ”という状況で、だからといって複数の選手でケアするとフリーの選手やスペースができることになる。そして、チュアメニはこうした隙、チャンスを見逃さないサッカーセンスをも持ち合わせている。味方にとっては実に頼もしく、相手にとってはやっかいな選手である。 レアルの中盤にはクロースもいる。若いときから年齢を感じさせない老獪さがあったが、34歳となったいまはより洗練されたプレイを見せている。チュアメニがアンカーのときはインサイドハーフとして常に適確なポジションを取り、攻撃を組み立てる。チュアメニがCBに入ったときはアンカーを務め、冷静な判断で攻守のバランスを取る。 クロースは戦況を読む力、展開を読む力に優れ、攻守両面で大事なところに顔を出せる。キックの正確さは言わずもがなで、ロドリゴ、ヴィニシウス・ジュニオールといったスピードある選手が好むパスを出す。続けて、素早くゴール前にポジションを移してリターンを受け、展開力を生かして連続攻撃へとつなげることもできる。 2024年を迎えて、クロースはドイツ代表に復帰した。3月23日のフランスとの敵地での親善試合(フランス0-2ドイツ)では、レアルで同僚のチュアメニに対して激しくプレスにいくシーンもあった。お互いを知り尽くした質の高い両者の対戦は、EURO2024でも見られるかもしれない。 バルサではイルカイ・ギュンドアンが[4-3-3]のアンカーやインサイドハーフを務め、攻撃に厚みをもたらしている。運動量が多く、攻守両面でボールに絡む回数が多いギュンドアンは前線にボールを供給するだけではなく、自ら積極的にゴール前に飛び出してフィニッシュする。 チーム内にはアンカー候補としてギュンドアンの他にフレンキー・デ・ヨング、アンドレアス・クリステンセンなどがいて、いずれ献身的な守備ができてトランジションが早い。ウイングやインサイドハーフには連動する判断の早さ、プレイの早さが求められ、実際にいまのバルサには突破力のあるウイングが両サイドに配置されている。 同様にインサイドハーフにも攻撃の早さが求められるが、ギュンドアンは同ポジションでの出場も多く、タイミングを心得たボックス内への侵入で攻撃に厚みを生んでいる。古くはドルトムント時代からゴール前で仕事をするのが好きなタイプで、もともと得点力がある。33歳となった現在もイキイキとプレイし、バルサの中心となっている。