漢方が「がん治療」で大活躍…!? 最先端の科学で明らかになった東洋医学の「驚くべき効能」
漢方薬というと中国独自の薬と思われるかもしれないが、実は違う。5~6世紀頃に中国から伝わった伝統医学をもとに、日本で独自に発展を遂げてきたのが漢方薬だ。 【写真】症状別、困った時に頼りになる!イチオシの「漢方薬」一覧
ついに科学が「漢方の効能」を認めた
「江戸時代にオランダから伝わった西洋医学を『蘭方』と呼び、それと区別するために日本で主流となっている医学を『漢方』と呼ぶようになりました。漢方で使われる薬剤である漢方薬は、体調不良に効くものを経験に基づいて生みだした古くからの知恵で、実によくできています」(『東洋医学はなぜ効くのか』の共著者で島根大学医学部附属病院臨床研究センター長・教授の大野智氏) 経験と歴史の積み重ねによって体系化された漢方薬は「非科学的だ」として、西洋医学の世界ではマイナスのイメージが強かった。近代医学が確立するずっと前から「この草を食べたら症状が改善した」という手法を繰り返して、毒と薬の知見を蓄積したのだから仕方のないことかもしれない。 しかし、医学の進歩とともに、漢方研究においても臨床データの蓄積やメカニズムの解析がかなり進んできた。米国国立医学図書館が運営している医学論文データベースにおいて、「kampo」は2000年から正式に医学用語として登録されており、収載されている論文数も2000を超える(2024年5月現在)。 「漢方薬にエビデンス(根拠)がないというのは誤解です。学術団体である日本東洋医学会は、漢方薬を用いた国内外の臨床試験結果をホームページ上にリスト公開しています。このなかには、がん治療に伴う副作用の改善に効果があると結論づけられた漢方薬も複数あります」(前出・山本氏) たとえば半夏瀉心湯は、いまやがん治療の現場で欠かせない漢方薬となっている。その歴史は古く、3世紀頃から中国では胃腸薬として用いられてきた。それが現在、抗がん剤治療や放射線治療を受ける患者が発症した「口内炎の治療薬」として広く使われている。 抗がん剤治療や放射線治療には、体の組織のなかに活性酸素をもたらしてがん細胞を攻撃する作用がある一方で、正常な組織にも影響を与える側面がある。治療を受ける患者の40~70%が口腔内トラブルを発症するとされているほどだ。それが2014年の研究で、半夏瀉心湯の生薬に含まれる成分に、口内炎を起こす活性酸素を消去する作用があることが判明した。 抗がん剤の副作用を和らげることができれば、治療を続けられる。これが、がん治療における漢方薬の大きな役割だ。