コメ不足の今、じわじわと勢力拡大中!! 猛暑に強い新品種"にじきら"が王者コシヒカリの座を奪う!?
■コシヒカリは「腐っても鯛」? 業務向けでは需要が高まっているにじきらだが、家庭用ではコシヒカリに比べるとブランド力は弱い。「味の良い米として家庭向けに売れるかは様子見」と話す業者もいる。 前述の佐々木さんがブレンドで味わいアップを狙ったように、「価格を抑えたブレンド米として業務用だけでなく家庭向けにも良い」と話す米屋もいるなど、単一での味の評価は軒並み低いものの、ブレンド米としての評価は高い印象だ。 ではにじきらとは別に高温耐性かつ味の良い家庭用向け品種の開発予定はないのだろうか。 福島県の県農業総合センター作物園芸部の本馬昌直部長は「すでに候補はいくつかあるものの、品種化の予定はまだありません」と説明する。「県としては必要性があるので開発はしているのですが、生産者団体や流通業者などから品種化を要望する声が出ないと世に出ていかないのです」 新潟県、福島県会津若松市で見れば、今年はともに昨年ほどの高温ではなく、1等米比率は上がるとみられているが、喉元を過ぎても「暑さ」を忘れないよう、高温耐性品種の導入には長期的な視点での検討が必要だ。 前述の白川課長は「産地としていつまでコシヒカリにこだわっていくのかという議論が必要」と考えている。 「コシヒカリを諦めて品種を切り替えるチャンスなのか、他品種に切り替える県などがあることをチャンスととらえて会津はコシヒカリにこだわり続けるべきか、今後の課題です」と言うが、にじきらを扱う会津地域の集荷業者が「コシヒカリは『腐っても鯛』ですよね」と語るのを聞くと、結論は簡単ではなさそうだ。 ●柏木智帆(かしわぎ・ちほ) 1982年生まれ、神奈川県出身。お米ライター、米・食味鑑定士、ごはんソムリエ。大学卒業後、神奈川新聞の記者を経て、2014年にお米ライターとして活動を開始。2017年に取材で知り合った米農家の男性と結婚し、福島県へ移住。お米の消費アップをライフワークに、さまざまなメディアでお米の魅力を伝えている。2021年から「おむすび権米衛」のアドバイザーに就任 取材・文/柏木智帆