コメ不足の今、じわじわと勢力拡大中!! 猛暑に強い新品種"にじきら"が王者コシヒカリの座を奪う!?
■〝ミスターにじのきらめき〟 一方、新之助のような県オリジナルの高温耐性品種がない福島県では、昨年猛暑の影響を受けた生産者たちが「にじのきらめき(通称:にじきら)」という高温耐性品種を導入し始めている。 〝にじきら〟は2018年に国の研究機関(農業・食品産業技術総合研究機構、略称:農研機構)が開発した多収品種で、比較的値頃な価格で取引されている。デビュー後の6年間に21県で産地品種銘柄となるなど、ハイスピードで普及が進む全国的な注目品種だ。栽培面積は右肩上がりで2024年産は7600haを上回るといわれている。 福島県では今年からにじきらが登録された。JA会津よつば米穀部の白川達則課長によると、昨年の品質低下の影響で品種切り替えを考える農家も出てきているが、管内集荷分のコシヒカリの栽培面積は今のところは減少に至っていないという。 だが、会津地域では「今年はにじきらの種が間に合わなかった」「来年からにじきらを作る」と話す農家たちが何人もいるので、これから一定数のコシヒカリが高温耐性品種に置き換わる可能性もある。 また、新潟県では昨年のにじきらの1等米比率は20%弱と意外にも低かったものの、コシヒカリやコシヒカリ以外の品種からにじきらへの品種切り替えが進み、にじきらの生産量は右肩上がりだ。 猛暑を背景に全国に広がるにじきらだが、「以前はほとんどの県やJAは見向きもしなかった」と話すのは、一部の農家たちから「にじきら普及の暗躍者」とも呼ばれている佐々木憲一さんだ。 佐々木さんは全農(全国農業協同組合連合会)や大手米卸会社など農業系の会社や組織を渡り歩いてきた一方で、全国の産地を訪問して農家が儲かる仕組みづくりに取り組んでいる。 8年ほど前、佐々木さんは群馬県の農家に複数品種の高温耐性品種を試験栽培してもらった。この中で最も生育が良かったのがにじきらだ。岐阜県のJAに依頼したにじきらの試験栽培結果も良好だった。 そこで、佐々木さんは群馬県の農家に種子生産を依頼して、各地を渡り歩き、にじきらを普及して回った。さらに、全国に約700店舗を展開する某外食チェーンと組み、農家に種を供給して、収穫したにじきらを全量買い取り、店舗で使うという流れをつくった。 現在、同社が展開する店舗では、にじきらをメインにしたブレンド米を使っている。にじきらブレンドの今年度産の買い取り量は白米で5000tを超える見込みだ。