コメ不足の今、じわじわと勢力拡大中!! 猛暑に強い新品種"にじきら"が王者コシヒカリの座を奪う!?
■高温に強いコシヒカリ!? その新潟県では昨年、高温耐性の県オリジナル品種「新之助」の1等米比率が95%を記録した。暑さに強いだけでなくコシヒカリと作期がずれるため、規模の大きな農家のニーズに合い、昨年度4500ha程度だった新之助の栽培面積は、今年度は5300ha程度まで増えた。800haの増加は「過去最大の伸び幅」(県農産園芸課)だ。 一方で、新之助を栽培する農家からは、「病気に弱く、作りやすくはない」「今年は雨が多いので『いもち』に苦しめられている」という声も聞かれた。新之助は「いもち病」という病気に弱いため、防除が必要だ(県のコシヒカリは15年ほど前からいもち病抵抗性を持った「コシヒカリBL」に切り替わっている)。 そして防除の手間やコストがかかるのに、コシヒカリの買い取り価格よりも安い。そうなると、「病気に弱い」新之助よりも「高温に弱い」コシヒカリが選ばれやすい。コシヒカリ以外の品種を作っても「新潟米=コシヒカリのイメージが強すぎて売りにくい」といった新潟ならではの悩みもあるようだ。 だが、地球沸騰時代に突入していることを思うと、これからは栽培の工夫では太刀打ちできない高温の年がやって来るだろう。 そこで、県では昨年から〝高温耐性を持ったコシヒカリBL〟の開発を始めた。県農産園芸課の瀧澤明洋参事は「コシヒカリにこだわり続けるのは当然で、コシヒカリを捨てるなんてありえない。現場のニーズもあり、その信頼を裏切りたくない。高温が来ても毎年おいしいコシヒカリを食べられる日が来るのを信じて開発に取り組んでいます」と力を込める。 県内にはひと足先に世に出た〝高温耐性コシヒカリ〟がある。新潟大学が2020年に開発した「コシヒカリ新潟大学NU1号(通称:新大コシヒカリ)」だ。しかし、瀧澤参事は「BL(いもち病抵抗性)遺伝子がない点を非常にネガティブにとらえています」と明かす。 関係者や事情通の農家たちの間では、高温耐性を持ったコシヒカリBLは順調にいけば3年後には候補となる稲の試験栽培が実際の農家の田んぼで行なわれそうだという。