『明日カノ』の次はガールズサスペンス! 新連載『パーフェクト グリッター』はどのようにして生まれたのか《著者・をのひなおインタビュー》
リアルかつ生々しい描写で現代の若者の男女事情を描き、マンガ配信サービス『サイコミ』(Cygames)での連載時、社会現象を巻き起こした『明日、私は誰かのカノジョ』(以下、明日カノ)。最終話の配信から約1年。作者・をのひなお先生が新たに挑むのは渋谷が舞台のガールズサスペンス! そんな新連載『パーフェクト グリッター』のテーマやタイトルが決まるまで、そして気になる見どころについて、をの先生にお話を伺った。
(取材・文=ちゃんめい)
最初は美容整形版『医龍』を描く予定だった
――この度は新作『パーフェクト グリッター』の連載開始、おめでとうございます。今年の2月に『明日カノ』最終巻記念の取材をさせていただいた際はちょうど新連載の準備中で、3つのアイディアのうちの1つに決まったところだと仰っていましたね。 をのひなおさん(以下、をの):当時は美容整形がテーマの作品を描こうとしていました。美容整形は『明日カノ』3章でも描いたテーマですが、美容整形を受ける側の話だったので、今度は美容整形を行う先生側の物語を描きたいなと。たとえるなら、美容整形版『医龍』みたいな感じで有識者の方に取材もしていました。ですが、取材を重ねていくうちに「描きたいのに描けない」という葛藤が生まれてしまい、1話のネームが全く切れなくなってしまったんです。結局このアイディアは全部ボツにして、全く違う物語を考えた結果『パーフェクト グリッター』が生まれました。
――それはどんな葛藤だったのでしょうか? をの:二重整形に埋没法と切開法の2種類の施術があるように、美容整形はなりたい顔に対してのアプローチがいくつもある。また、豊胸手術では医師ごとにシリコン派、脂肪注入派で意見が分かれるなど、先生によって信念が全く違うんですよね。となると、漫画のなかで「この施術が良いよ」とは描けないじゃないですか? 取材をすればするほど、題材の性質上伴うリスクを実感してしまって、何も描けなくなってしまったんです。 ――美容整形や施術内容の選択はもっと慎重であるべきなのに、漫画をきっかけに安易に決める方が出てきてしまうかもしれないと。 をの:どんなにリスクを描いたとしても影響される方はいらっしゃると思いますし、そう考えるとネームを切る手が止まってしまいました。あと、別に二重整形をしなくても身体的には全く問題がないように、美容整形は医療と違って絶対に受けなければならないものではない。なのに、あえてリスクを背負って施術を受ける……。担当編集さんからは「そこにドラマがあるんだよ」と言われましたが、どうしても描き切る自信が出なかった。そういった理由で今回はボツにしましたが、美容整形は個人的にもずっと興味のある分野ですし、医療ドラマも大好きなので、経験を積んでいつか再チャレンジしたいです。