転売ヤーがディズニーランドの「使用済みのチケット」を1000円で買い取る驚愕の理由
「使用済みのチケット」、1000円で買い取ります
こうした回答は、筆者にとって初耳というわけではなかった。実は、この回答が届く約2週間前、筆者は再び劉姐らの買い付けに同行していた。ディズニーシーの新エリア、ファンタジースプリングス開業2日目のこと。その際に、改定された転売対策について、目の当たりにしていたからだ。 入園の際、彼らが回転ゲートのQRコード読み取り機に読み込ませたチケットは、前回取材時とは違ってひとりにつき1枚だった。その理由について劉姐は、確かに「ひとりがたくさんのチケットを使用済みにするのはダメになった」と説明していた。 ところが入園直後、彼らはすぐに踵を返し、通ったばかりの入園ゲートを抜けて、外に出たのだった。するとさらに、入園ゲートへと続く数人の行列の最後尾に並び直したのだった。 「一度にたくさんのチケットを使用済みにするのはダメだけど、一回パークから出て別のチケットで入園するということを繰り返せば、前と同じようにひとりでありったけのチケットを使用済みにできる」(劉姐) 結局、彼らは退園後に再入園を2回繰り返し、ひとりにつき3人分のチケットを使用済みにしたのだった。 こうして実際の人数の3倍の「購入権」を得た彼らだったが、グッズの買い付けに向かったショップでは一部の商品が、「おひとり様1点限り」に制限されていた。前回の取材時と同様、彼らは複数の店舗を巡って、転売用の商品を次々と購入していったが、その総量は購入個数制限の厳格化の影響で、前回と比べるまでもなく少量であった。園内では、大型ビニールバッグを両肩に吊るして歩いている転売ヤーの姿もほとんど見られなかった。 しかし、転売ヤーがディズニー側の対策強化によって封じ込められてしまったわけではないようだ。 「転売対策が強化され、買い付けが難しくなったことは事実だけど、それによって中国の転売市場に流れる商品の量が少なくなり、単価が上がった。だから我々としては、グッズ一個あたりの利幅が大きくなり、楽して稼げるようになったともいえる。もう以前のように重い荷物を持って何往復もしなくてもよくなった」(劉姐) 加えて彼らは、わざわざパークに行かずとも商材を仕入れるスキームを確立していた。 「当日に入園済みのチケットがあれば、その日の夜11時45分までは、公式オンラインショップで、グッズの購入ができる。そこでSNSで『使用済みのチケットを1000円で買い取ります』と投稿して集めたチケットで、限定品を含めたグッズを買い付けることができる。わざわざパークに行かなくていいので楽だし、買い付けコストも安くてありがたい」(劉姐) 取材に対し、オリエンタルランドは、 「一部の商品が人気急騰により、パークで購入したくてもできないゲストがいることを課題と捉えております。引き続き従来の対応策の継続、改善を行いながら、一人でも多くのゲストに安心・安全に東京ディズニーリゾートで快適にお買い物をお楽しみいただけるよう環境の整備に努めてまいります」 とも答えていた。 オリエンタルランドによる対策の強化は、果たして転売ヤーの駆逐に繋がるのか。それを見極めるにはまだもう少し時間がかかりそうだ。 *** この記事の前編【「ブスな顔のぬいぐるみは買わない」ディズニー限定グッズを買い占めるグループに密着 大量購入する驚愕の手法】では、購入個数制限のあるグッズを驚きの方法で手に入れる転売ヤーについて報じている。 ※『転売ヤー 闇の経済学』より一部抜粋・再構成。
デイリー新潮編集部
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