日本企業トップが賃上げ定着に意欲、大企業は昨年並み5%
Miho Uranaka [東京 7日 ロイター] - 経済3団体が7日に開催した新年祝賀会で、企業のトップからは賃金引き上げに意欲的な発言が相次いだ。多くの企業が昨年と同水準の5%程度を今年の賃上げ目標に掲げ、物価上昇を上回る賃上げの定着に前向きな姿勢を示した。 経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス社長)は祝賀会の冒頭、「何といっても消費者物価指数を上回る賃上げをしっかりと定着させることが不可欠」と述べ、特に雇用の7割を支える「中小企業の賃上げが鍵」として一層の賃上げを呼び掛けた。 新浪氏は会見で、大手企業では昨年と同水準の5%程度の賃上げが期待できるとの予想を示した。直近の定点観測アンケート(昨年12月26日公表)では25年の賃上げ率は全体で3.89%(加重平均)だが、今後労使の交渉を経て「去年(5.10%)と同じくらいはいく」と述べた。 中小企業については日本商工会議所の小林健会頭が、最新の調査で賃上げを「未定」としている約3割の企業が「春闘の様子をみながら賃上げする方向に動けば、昨年より若干、賃金を引き上げる企業が増えていく」と指摘した。 祝賀会では各企業トップからも、賃上げに前向きな発言が続いた。すでに3年連続で賃上げを実施している三井不動産の植田俊社長は「今年も5%超を目指す」とコメント。賃上げは継続的に行うことが大事だとも語った。 すかいらーくホールディングスの谷真会長は6.4%、日本マクドナルドホールディングスの日色保社長は過去2年と同じく4%前後の賃上げを目指して交渉すると説明。ローソンの竹増貞信社長も「上げ幅は5%が一つの目線」として、安定的に賃金を引き上げていく考えを示した。 そのほか、ライフコーポレーションの岩崎高治社長も4年連続の賃上げを実施すると明らかにし、日本生命保険、三菱商事、ANAホールディングス、キリンホールディングスなどのトップも前向きな姿勢を示した。 連合は、今年の春闘でベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)の合計で5%以上の賃上げを目指す方針。中小組合は、企業規模による格差を是正するため「6%以上」の賃上げを目安としている。春闘の動向は、日銀も金融政策運営の判断に必要なものとして注目している。 日本商工会議所の小林氏は、連合が目指す中小6%の引き上げについて「心意気はよしだが、それについてあらゆる手を使ってやっていきたい」と指摘。経済同友会の新浪氏は「今まで交渉は激しく行われてきていなかった経緯があるが、今後は交渉によって議論が出てくるのではないか」として、今年の春闘は例年以上に交渉の熱気が高まる可能性があるとの見方を示した。 小林氏は祝賀会のあいさつで「賃上げはさることながら、インフレの質を変えていく年」だとして、過去2年のコストプッシュによるインフレをデマンドプル型に変えていく必要があると指摘。経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)も、今年は「日本がデフレマインドから完全脱却できるかの分水嶺の年」と指摘した。