横浜DeNA開幕勝利投手、今永の親指に残った復活印とは?
終わってみれば8-1のゲームになったが、7回までは緊迫感があった。与田監督は、今永を我慢したラミレスと対照的に「フォームバランスが崩れかけていた。簡単に点が取れない状況、先頭でチャンスをつかみたかった。その両方(の理由)があった」と、無失点ピッチングを続けていた笠原に、6回の先頭で打席が回ってくると、早々と代打・亀澤を送った。亀澤は凡退。その回にチャンスは作り、2番手の又吉も良かったが、結果論として、与田監督の“早仕掛け”は、中継ぎの起用に歪を生み失敗した。 開幕投手への信頼か、それとも勝負手優先か。 その是非が、この日の分岐点だったのかもしれないが、筆者は「与田監督は、こんな面白いことをするのか」との驚きがあった。 彼が語ってきた「後ろの不安を解消するには先発に1イニングでも長く引っ張ってもらいたい」との考えには矛盾する采配だったが、「開幕はあくまでも143分の1」というメジャー的な発想も持っている。試合前には、番記者との雑談タイムも作り「勝つことしか考えていない」とも語っていた。「起用やタイミング。最後まで緊張していた」という与田監督にしてみれば、先手が必須のアウエーゲームの中、今永と笠原の出来の比較などを考慮した結果、弾き出した勝負手だったのだろう。 だが、初スタメンに抜擢した阿部、加藤の連打で作った3回無死一、二塁の先制機に投手の笠原はバントができず、8回には一塁のビシエドが、高橋の美技を台無しにする後逸(記録はヒット)。さらに内野にポーンと上がったフライをお見合いするという“草野球並み”のミスもあり、それらが大量失点につながった。 「絶対に起きてはいけないプレー。競ったゲームでポンと(ああいう形で)点を取られると集中力を欠くことになる。二度とやっちゃいけない」 与田監督は厳しい口調だったが、采配云々の問題までにも至らず、ミス、ミス、ミスのチームと、エースと4番が仕事をしたチームの勝敗に白黒がつくのは無理もなかった。 「関節がうまくはまって体が動いた。この感覚を忘れないように再現できるようにメモしておきたい。今日の勝利を小さな勝利に感じるほど、これからもっともっと勝利を積み重ねていきたい。もう次の試合に頭も体も切り替えている」 今永が、そう前を向くと、それより1時間ほど前に三塁ベンチ裏の素振りスペースで記者に囲まれた与田監督も、3年連続開幕黒星から気持ちを切り替えていた。 「守りで流れを引き寄せる必死のプレー(高橋の再三の好守)もあった。勝ちに結びつかなかったが、いいプレーも随所にあった。いろんなことがわかった試合だった。毎日、毎日、試合はある。常に切り替えていかねばならない。大敗した後。(明日も)選手の動きをしっかりと見ていきたい」 開幕戦の勝敗はペナントレースへ大きな影響力を持つのか、それとも単なる143分の1試合だったのか。その答えは9月になればわかるだろう。開幕カードの第2ラウンドは、横浜DeNAが、昨年、春先の救世主となった20歳の京山が先発で、中日は対照的に40歳のベテラン、山井を立てる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)