【フィアット600e初乗り】この子は連れて帰らないとダメかも……!
イタリアはデザインで勝負
AUTOCAR UK編集部が伝えたように、イタリア本国では500eの生産が一時ストップ。半導体不足、進まぬインフラ整備、揺らぐ各国の電動化政策など、外的要因に翻弄されながら、世界的にBEVは誰が見ても伸び悩んでいる。 そのため600eとプラットフォームを共有し同じ工場で生産するアルファ・ロメオ・ジュニアやランチア・イプシロンも、ハイブリッドモデルを用意。同じフィアットでいえば、BEVとハイブリッド2本立てのグランデ・パンダを出しつつ、現行パンダをパンディーナとして生産続行するなど、メーカーの動きは慌ただしい。 ここ日本でもインフラの問題はあるが、BEVの長期レポート車を抱えている筆者は、上手につきあえば十分に楽しめる、いや、今楽しまなければ損ではないかと思っている。 そんな中で600eは、必要な装備はひととおり備わっていて、逆にBEVにありがちな余計なものがついていない印象もあり、オーソドックスでシンプルなプロフィールは、その走り同様、ストレスを感じさせないものだった。それはエンジンの振動や音がなくなったことによる、BEVとしてのアドバンテージもあるのだろう。 いやそれでもエンジンがいいという方はハイブリッドを待てばいいし、スタイリングに惚れたら、BEVをデザイン買いすればいいだろう。確かに決してリーズナブルとは言い難い価格設定だが、撮影中にまるで動物のように愛らしい顔で見つめられて、「この子は連れて帰らないとダメかも……」と思ってしまった。個性の差をつけにくいBEVカテゴリーにおいて、イタリアはデザインで勝負! という、昔も今も変わらぬ底力を見せつけてきたのである。
佐藤亮太(撮影) 平井大介(執筆/編集)