窪田正孝、イッセー尾形の「演技へのこだわり」に驚いた! 秋ドラマ最注目『宙わたる教室』監督が語る
イッセー尾形があえて言わなかったセリフ
圧巻だったのは、イッセー尾形が扮する長嶺省造が定時制に通う理由が明かされる第4話。高校に通えなかった憤りで懸命に仕事を頑張ってきた長嶺だが、実は定時制に通いたかったのは病気を患う妻のほうだったこと。また、毎回最前列に陣取り、質問しまくるのも、妻に説明するためだったことがわかる(詳しくは澤井香織氏のインタビューを参照)。 「周りの生徒たちに自分と妻の話をするシーンは、第4話の根幹をなすシーン。イッセー(尾形)さんもそれを理解されているから、入念に長嶺というキャラクターを掘り下げ、台本の書き込みなどもすごくたくさんされていました」(吉川氏) そんな中、1つだけ「うまく言えないかも」というセリフがあったという。言葉として発することはできても、長嶺として気持ちがどうしてもうまく乗らないという、その言葉とは。 「『妻は今、入院してます。退院はいつになるか分かりません。私はね……』の後に『後悔してるんだよ』というセリフがもともとあったんです。長嶺が妻に長年無理をさせすぎた、どれだけタバコの煙を吸わせたことか……という言葉の前に言う『後悔してる』に違和感がある、長嶺がそんな軽々しく口にはしないんじゃないかとおっしゃられて。確かにそうかもしれないということで、イッセーさんのやりやすい形で1回やってみてくださいと言ったんですね。 実際、その言葉がないほうが『私はね……』の後の“間”にすごくグッときて。何か言おうとして口から出ず、一瞬黙るイッセーさんが、後悔だけじゃなくいろんなことを物語っているなと思いました。 長いシーンだったので、体力的にもかなり大変な撮影だったと思うのですけど、一切集中力を切らすことなく見事に演じ切られたイッセーさんは、さすがというしかなかったですね」(吉川氏) ◇続くインタビュー第2回は11月28日(木)に公開予定。吉川氏と一色氏に、ストーリーが練られた過程や撮影でのこだわり、物語終盤の見どころについて伺った。 ドラマ10「宙わたる教室」 NHK総合 毎週火曜 夜10:00~10:45 (再)NHK総合 毎週金曜 夜0:35~1:20(木曜深夜) Prime VideoでもNHK放送の翌週水曜0:00に最新話を配信
田幸 和歌子(フリーランスライター)