窪田正孝、イッセー尾形の「演技へのこだわり」に驚いた! 秋ドラマ最注目『宙わたる教室』監督が語る
窪田正孝の芝居が作品のトーンを決めた
窪田の徹底したリアルの追求。それが藤竹像を立体化させ、物語全体のトーンを決めていく指針となる。 「最初にプリズム実験をするシーンの撮影があったんですが、初めて柳田岳人(小林虎之介)と藤竹先生が話をするとき、あえて熱っぽくない演じ方で、いつもの淡々とした感じがありつつ、でも、対象への興味が滲みでていて。先生としてというよりも、科学者として生徒と接している感じがすごく藤竹先生らしいなと思いました。そこから先は窪田さんの演じる藤竹先生を軸に全体を構築することを考えました」(吉川氏) 演出サイドのプランをあらかじめ伝え、リハーサルで動いてもらい、しっくりいかない部分については窪田から「こう動いたらどうか」という提案があったり、撮影のプランを変えたりと、コミュニケーションを取りながら進めていく流れとなった。結果的に、窪田の追求するリアリティと映像のリアリティがマッチし、「宙わたる教室」の世界観が作られていったのだという。
小林虎之介の本来の魅力が役に乗っている
様々な事情で定時制に通う生徒たちも皆、ハマり役で、キャスティングに全くスキがない。キャスティングの指針について、吉川氏はこう説明する。 「先に定時制高校をいくつか取材してから役者さんを決めました。10年以上前に作られた浦和にある定時制を描いたドキュメンタリー映画(『月あかりの下で』/2008年)を観て定時制には『スクール☆ウォーズ』みたいなイメージを抱いていたんですが、実際取材に行かせてもらった学校は全く違っていて。 実はこの10年ぐらいでガラッと定時制の様相が変わったそうです。そこで、今のリアルに即して、レギュラー生徒の方々のキャストは決めました。それぞれの生徒に夜の学校に来る理由を感じられる方を選んでいます」 視聴者が第1話で完全に心をつかまれたのは、柳田岳人に扮する小林虎之介。文字の読み書きが苦手なことを周りにバカにされ続け、今はゴミ処理業者で働きながら、自動車の運転免許をとるために定時制に通っている。 実は聡明で計算能力は高いのだが、藤竹に「発達性ディスレクシア」という学習障害ではないかと指摘されると、これまで誰も理解してくれず、諦め続けた日々に憤り、泣きながら藤竹に怒りをぶつける。 「小林さんはすごく真面目で、役に対してまっすぐ手加減なくコミットしてくれる人。まだお芝居を始めて3年目くらいで、今いろんなことを学んでいる最中だと思うんですけど、感情の出力の仕方が、100のときは本当に手加減なしに100 で。撮っているときも『あ、このタイミングを逃しちゃうと、撮れなくなってしまうから、今絶対に撮らなきゃ』みたいなことはありました。 ご本人も岳人と同じく純粋でまっすぐなんですが、そうした小林さんが本来持っている性質が役と重なって、岳人をより一層魅力的にしてくれたのだと感じています」(吉川氏)